「ファイブフォース分析」や「バリューチェーン」の生みの親として知られる経営学者、マイケル E. ポーター教授は、「IoT時代の競争戦略」(原題:How Smart, Connected products Are Transforming Competition)と題した論文を『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に寄稿している(日本版の2015年4月号に掲載)。
共著者として名を連ねているのは、米PTCの社長兼CEOであるジェームズ E. へプルマン氏だ。製品ライフサイクル管理やサプライチェーン管理ソリューションを提供するPTCは、M2Mアプリケーション開発プラットフォームのThingWorx社やIoT/M2MプラットフォームサービスのAxeda社を買収するなど、最近IoTに非常に力を入れている。
競争戦略の第一人者であるポーター教授は、IoTのインパクトをどのように捉えているのだろうか。PTCジャパンは2015年3月31日、同論文について解説する勉強会を開催した。
解説を行ったPTCジャパン SLMセグメントセールス/事業開発担当バイスプレジデントのアシャー・ガッバイ氏 |
「IoTは第三のIT革命」
これまでからITは、企業の競争戦略に大きな影響を与えてきた。その第一波が訪れたのは、60~70年代にかけてのことである。注文処理や経費支払、CADなど、バリューチェーン上の様々な活動が自動化された。第二波はインターネットだ。地理的制約を越えて、グローバルに協業できるようになった。
そして、第三波となるのがIoTである。「ポーター教授は、これまでのIT革命の中でも、最も大きな波になると言っている」とPTCジャパン SLMセグメントセールス/事業開発担当バイスプレジデントのアシャー・ガッバイ氏は解説した。
IoTが画期的な点は、「モノ」の本質をも変化させることだという。これまでのIT革命は、バリューチェーンこそ変革したが、製品自体を大きく変革することはなかった。
なお、ポーター教授は、この変革を理解するうえで、IoTという言葉はさほど有益ではないとしている。IoTは、モノをつなぐ仕組みにすぎないからだ。このためポーター教授は、「スマート・コネクテッド・プロダクツ(smart, connected products)」という言葉を使って、この変革が与える影響を論じている。