U-NEXT、ビッグローブ、ソネット、ワイヤレスゲート新興MVNO4社に見る「MVNOビジネス」の実際とポテンシャル

格安SIMを牽引してきた日本通信、IIJ、NTTコミュニケーションズの3社を今年に入って新興MVNOが追い上げている。SIM型サービス事業に注力するU-NEXT、ビッグローブ、ソネット、ワイヤレスゲートの4社のMVNO戦略を見ていく。

U-NEXT「U-mobile」――「本業」との相乗効果を生かす

10月1日、東京・南青山3丁目交差点に新しいタイプの携帯電話ショップ「U-NEXTストア」がオープンした。

運営主体は映像配信サービス大手で、2013年からMVNOサービス「U-mobile」を展開しているU-NEXTだ。店舗ではワイモバイルやソフトバンクの携帯電話も売られているが、スペースの過半はファーウェイの「Ascend G6」やプラスワン・マーケティングの「freetel LTE XM」「freetel Priori」などのSIMフリー端末の実機展示に割かれている。

U-NEXTストアは都心の幹線道路の交差点に立地している
U-NEXTストアは都心の幹線道路の交差点に立地している

壁面にはU-mobileのデータ通信専用SIM/通話機能付きSIMのパッケージが並べられており、ユーザーはこれらとSI Mフリー端末を組み合わせて好みの「格安スマホ」を購入することができる。

最近、家電量販店などでSIMフリー端末を置く店舗が出てきているが、MVNOが直営ショップで、しかもこれだけ品揃えが充実しているケースは例がない。U-NEXTではこの店舗を、映像配信を含む同社のサービスにユーザーが触れて体験できる「ショールーム」としても位置付けている。

U-NEXTストア
U-NEXTストアの1階には、さまざまなSIMフリー端末の実機展示が行われている。2階のカウンターではこれらの購入や、詳しい説明を受けることができる

販売数は月1万台超に
U-NEXTは有線ラジオ放送最大手USENの100%子会社として発足、USENが展開してきた光回線販売事業と映像配信事業「GyaO」を2010年に継承、現在は独立系企業として事業を展開している。

MVNO事業への参入は2013年。5月にイー・アクセス(現ワイモバイル)の携帯電話回線を使う「U-mobile*E」を、9月にはドコモ回線を利用する「U-mobile*d」をスタートさせた。狙いは、主力事業の1つである光回線販売とモバイル、上位レイヤの映像配信サービスの3つを組み合わせることで事業拡大を図ることにある。

U-NEXTでMVNO事業を所管する取締役通信事業担当役員の二宮康真氏は、その例として「当社はフレッツ光の販売実績で上位に付けており、月に数万回線を販売している。この数%に加入していただくだけで相当な増収が期待できる」と説明する。

2013年9月にはドコモ回線を使ったSIM型サービスの提供を開始、これを機に販売数が大きく伸びた。特に4月以降は新プランの導入で販売数が月1万を超えているという。

U-NEXT 取締役通信事業担当役員 二宮康真氏
U-NEXT 取締役通信事業担当役員 二宮康真氏

SIM型サービスを提供するには携帯電話事業者のネットワークとのレイヤ2接続が不可欠だが、新規参入事業者にはハードルが高い。U-NEXTは、すでにドコモとレイヤ2接続を行っていたフリービットからMVNEにより回線提供を受けることでこの問題をクリアした。

二宮氏は「MVNEのサービスを単に再販するのではなく、フリービットに帯域管理などのオペレーションを委託する形を取っている」と明かす。これにより、リソースを得意分野である営業やマーケティング、サービス開発に集中できる利点も生じているという。

「ストア」のFC展開も
U-NEXTでは今年に入ってラインナップを拡充、格安SIM/スマホから音声サービス、プリペイドSIMまでSIM型サービスの領域のほとんどをカバーし、先行する大手MVNOをキャッチアップした。その上で差別化ポイントして「一定の品質を確保しつつ、一段安いサービスを提供することを意識している」(二宮氏)という。

これを可能にしているファクターの1つが、事業間との連携だ。例えばU-NEXTのSIMパッケージにはスマホ向けの映像・音楽のコンテンツ購入に使える600円分のポイントがバンドルされており、映像配信サービスのユーザー獲得につながってきている。

二宮氏は「MVNO単独で事業を考えているわけではない」と強調する。

もう1つ、U-NEXTのSIM型サービスの大きな強みとなっているのが販売網である。発売当初は直販サイトが主力だったが、現在はヤマダ電機、PC DEPOT、ヨドバシカメラ、Amazonなど多様なチャネルで展開している。直近では販売数の8割がこれらチャネル経由での販売になっているという。

一部の携帯電話ショップでも取り扱いが始まっており、U-NEXTストアについても「展開したいという要望が早くも上がってきている」という。同社ではフランチャイズなども検討していく。

では、この事業はどの程度まで伸びるのだろうか。二宮氏は「少なくとも3年間で100万加入は超えたい」とする。この成否を予想する上で注目される数字がある。同社の音声対応SIMの販売数の6割が、他の携帯電話事業者からのMNPだというのだ。

MVNOのサービスがすでに大手携帯電話事業者に対しても一定の競争力を持っているとすれば、100万加入は決して不可能な数字ではない。

月刊テレコミュニケーション2014年11月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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