5G RANの消費電力を2割減へ、OKIと東北大が仮想PONとAIで実証

5G RAN(無線アクセス網)の省電力化に向けて、OKIと東北大学が共同で、トラフィック量を予測するAIと仮想PONシステムを組み合わせた「仮想化資源制御技術」を開発した。世界で初めてオープンソースソフトウェアをベースとした仮想PONシステムを活用。これにより、導入コストの低廉化が見込めるという。2026年頃の実用化を目指す。

今回、OKIと東北大学が開発し実証に成功した「仮想化資源制御技術」とは、インターネット接続サービスで使われているパッシブ光ネットワーク(PON)システムの運用を効率化することを目的としたものだ。

高速・大容量な光アクセスサービスを低コストに構築・運用できるPONシステムの利点は、多数の無線部(RU:Radio Unit)を、制御部(CU/DU)やコアネットワークに収容するRAN(無線アクセス網)にも活用できる。

PONは構造がシンプルなのが最大の利点だ。局側装置のOLT(親局)と、宅内装置のONU(子局)の間で1対多の通信システムを構成するが、OLTとONU間はパッシブ部品で接続するため、電源が不要な光分岐装置(スプリッタ)のみで稼働できる。これが、PONがFTTHサービスで広く普及した第1の理由であり、LTEや5GのRANでも、RUを効率よく収容するのに適している。

AIのトラフィック予測に従い、5G RANを動的制御

ただし、これには課題もある。5GではLTEに比べてRUの数が飛躍的に増えるため、伝送帯域や消費電力の無駄が大きくなることだ。

(左から)OKI 研究開発センター長の増田誠氏、同センター フォトニクス研究開発部 プロフェッショナルの鹿嶋正幸氏、東北大学 電気通信研究所 ネットワークアーキテクチャ研究室 長谷川剛教授

(左から)OKI 研究開発センター長の増田誠氏、
同センター フォトニクス研究開発部 プロフェッショナルの鹿嶋正幸氏、
東北大学 電気通信研究所 ネットワークアーキテクチャ研究室 長谷川剛教授

2023年12月7日に開催した記者説明会で、OKI 研究開発センター長の増田誠氏は「5G以降は、LTEに比べて無線の伝搬距離が短くなるので、アンテナ数を膨大に増やさなければならない」とその理由を説明した。セル数はLTEと比べて約100倍にも達すると言われており、必然的に、配下にユーザーがいないセル、つまり無駄なセルが発生する(下図表の左)。当然、無駄に消費される電力も増える。

この無駄を無くそうというのが「仮想化資源制御技術」の目的だ。ひとことで言えば、AIがトラフィック量の変動を予測し、それに基づいて仮想化されたPONを動的に制御することで無駄な電力消費を抑えるというもの。「仮想PONと資源割り当て技術をOKIが、予測技術を東北大学が担当することで開発し、実証で消費電力を20%以上削減できる効果が確認できた」(増田氏)

「仮想化資源制御技術」研究の概要

「仮想化資源制御技術」研究の概要

しかも、本技術は、通信事業者ネットワークで商用利用されているオープンソースソフトウェア(OSS)を活用している点もポイントだ。ネットワークOS「ONOS」と、米AT&Tやドイツテレコム、NTT等の主要キャリアが参画する仮想PON「VOLTHA」を使用。これにより、導入コストが低く抑えられるという。

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