<連載>ChatGPT時代の通信ネットワーク(第4回)「バーチャル助手を使いこなす」ネットワーク“AI運用”の最前線

ネットワークで発生する問題の探索と原因究明はAIに任せて、人間は出てきた情報を基に対処法を判断する──。運用監視の手法は今、そんな形へと劇的に変貌し始めている。ChatGPTもその進化を下支えする。

「過去1週間、調子が悪かった社員はこの4人です。Wi-Fi認証に問題があったAさんは解決済み。電波干渉でスループットが落ちていたBさんとCさんも、チャネル変更で対処しておきました。Dさんは端末OSのバージョンに原因があるので、更新をおすすめします」

近い将来、ネットワーク運用管理者をこんな心強い仮想アシスタントがアシストしてくれるかもしれない。次々と発せられるアラームに追いまくられ、膨大なログとにらめっこする日々とはおさらばだ。そんな作業はAIに任せて、人間は「IT/ネットワークをビジネスにどう役立てるか」に頭を使う──。AIの力を得てネットワーク運用は今、劇的に変わろうとしている。

「アラームなければOK」でよい?

ネットワークの監視・運用にAIを使おうという取り組みは意外と古く、その端緒は2010年代前半に遡る。代表例は、2014年にクラウドWi-Fiベンダーとして創業したMistの「Mist AI」。同社は2019年にジュニパーネットワークスが買収し、現在はWi-FiのみならずLAN/WANにもAI監視・運用の幅を広げている。

シスコシステムズも2010年代からSDN製品開発と並行してAI/機械学習(ML)活用を推進してきた。SDNコントローラーの「Cisco DNA Center」で、AI/MLがパフォーマンス監視やトラブルシューティングを支援するアシュアランス機能を提供。エンタープライズネッワーク事業担当執行役員の眞崎浩一氏によれば、「国内で約400社が使っている。ネットワーク運用を内製化する企業が増えており、その負荷軽減のためにAI/MLによる自動化を活用するケースが多い」という。

シスコシステムズ 執行役員 エンタープライズネッワーク事業担当 眞崎浩一氏

シスコシステムズ 執行役員 エンタープライズネッワーク事業担当 眞崎浩一氏

AI/MLの活用目的を一言で言うと、アラームやログからの脱却だ。表面化していない問題を洗い出したり、障害の予兆をつかむのにAI/MLを使う。ジュニパー 執行役員 技術統括本部 本部長の上田昌広氏は、その理由を次のように話す。

ジュニパーネットワークス 技術統括本部 統括本部長 執行役員 上田昌広氏

ジュニパーネットワークス 技術統括本部 統括本部長 執行役員 上田昌広氏

「アラームがない、クレームが来ないからと言って、必ずしもユーザーがインフラを使えているとは限らない。(品質劣化や障害等の)イベントベースではなく、スループットや遅延に問題がないか、Wi-Fiのハンドオーバーができているかなどユーザーレベルでエクスペリエンスを可視化するにはAIが必要だ」

顕在化した問題を解決する際にも、AI/MLは役立つ。従来の手法では、Wi-Fiの接続不良や速度低下等の問題が再現しないことで原因究明が進まないケースも多い。調査には膨大なログを漁る必要があるが、これもAIにはお手の物。人間は、AIが集約した情報を基に判断し行動すればいい。

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