いよいよ日本でもPS-LTE(Public Safety LTE:公共安全LTE)の実用化が間近に迫っている。
PS-LTEとは災害や事故、テロといった緊急時に、警察、消防、自衛隊などの公共安全機関が共同で使用する無線システムのことだ。
警察無線や消防無線などの既存システムは、各機関が独自に整備・運用しているもので、組織横断的な連携がしづらいという課題があった。PS-LTEはこの課題を解決するシステムとして期待されている。
PS-LTEの導入・普及が最も進んでいるのがアメリカの「First Net」だ。2017年から整備が始まり、2021年以内に全国での整備を完了する予定になっている。現時点での警察、消防、救急、軍などを含むエンドユーザーの契約数は250万以上で、世界で最もネットワークの整備、ユーザー数、ユースケースが進展している。次に導入・普及が進んでいるのが韓国で、今年3月に全国整備が終わり、年末までには約15万ユーザーに達する見込み。この他にも、イギリス、フランス、フィンランドなどで導入が進む。
マルチメディア振興センター ICTリサーチ&コンサルティング部
シニア・リサーチディレクター 飯塚留美氏
各国の設備と周波数は?PS-LTEの運用形態は国によって異なっており、大きく3つに分けられる。
1つ目は専用周波数を利用する形態。代表的なところではアメリカ、韓国、フランスがこれを採用している。アメリカはAT&Tが請負業者として専用網を構築し、700MHz帯(20MHz幅)を利用しているが、自らの商用網も活用している。専用網と商用網の併用は、韓国やフランスでも共通している。
2つ目は商用網を利用するもので、イギリスがこの形態をとる。イギリスはMNOのBT/EEが事業を請け負い、自らの商用網を使って緊急サービスネットワーク(ESN)を提供。また、商用の周波数の他にも、地上の警察車両と上空にいるヘリコプター間など地対空の通信に関しては、内務省が保有する2.3GHz帯を使っているという。
3つ目は既存の商用網を使うMVNO方式だ。フィンランドがこれを採用し、政府傘下の事業会社がMVNOとして公共安全サービスを提供。MVNOが優先的に商用網へアクセスできることを保証するための法律が整備されている。「どの形態であってもコアネットワークは商用のコアネットワークと完全に分離されている(図表1)。専用コアを使っているので、商用コアとは同居していない。これにより、安全性・信頼性を担保するというのが基本になっている」(飯塚氏)
図表1 公共安全ネットワークの構成