「ドコモの5GはすべてO-RAN準拠の基地局で展開していく」
NTTドコモ 無線アクセス開発部 開発戦略担当課長のウメシュ・アニール氏が語る「O-RAN」とは、同社が米AT&Tら通信キャリア5社で立ち上げた「O-RAN Alliance」とそこで策定された標準仕様のことだ。
無線アクセスネットワーク(RAN)のオープン化を推進する団体で、26のオペレーターを含む190社が参加(2020年7月現在)。世界に先駆けてドコモが商用5G網にO-RAN準拠の基地局を採用したほか、KDDI、ソフトバンクも導入を表明している。
NTTドコモ 無線アクセス開発部 開発戦略担当課長 ウメシュ・アニール氏
RANに自由を与えるRANのオープン化はキャリアにとって、いわば“積年の夢”だ。LTE時代にも一度、機運が高まったが結実せず、現在もRANはシングルベンダーで構成するのが主流となっている。
LTEの携帯電話基地局は、無線の送受信部(Remote Radio Head:RRH)と制御部(Base Band Unit:BBU)を分離し、複数のRRHをBBUに集約するC-RAN(セントラライズRAN)構成を採っている。原理的にはRRHとBBUを異ベンダーで構成することも可能だが、仕様の共通化・標準化が充分でなく、基本的にシングルベンダーで構成するしかなかった。
だが、5Gで「これを継続することは難しい」とウメシュ氏は話す。4Gに比べて多様な要求条件を満たすために、より多くの機能や装置が必要で、使用する周波数帯も格段に多い。そのため、「様々なベンダーの強みを活かす必要がある」(同氏)のだ。
柔軟な機能選択・追加が可能になることが、オープン化の最大のメリットだ。O-RAN準拠の基地局をドコモや楽天モバイルに供給しているNEC ワイヤレスアクセスソリューション事業部(WASL事業部)マネージャーの桶谷賢吾氏は「コンポーネント単位で“いいとこどり”ができる」と語る。
ベンダーごとに長所と短所があるのは当然だが、図表の左のようにベンダーAだけで構成する場合は、弱い部分(図中の×)も使わざるを得ない。一方、マルチベンダー構成なら図表右のように、ベンダーB/Cの強みを組み合わせられる。一旦構築した後も、“部品”単位で最新の性能・機能を取り入れることが可能だ。ウメシュ氏は、「日本ベンダーなら装置の小型化と低消費電力が強み。これを活用していきたいし、国内外で広く採用される可能性もある」という。
図表 従来型(シングルベンダー)とOpen RANの比較