固定電話の通話時間は、右肩下がりの減少を続けている。特に家庭における存在意義は弱まる一方で、若い世代を中心に固定電話を引かない世帯も増えている。
では、企業における電話はどうだろうか。
最近は業務効率化やグローバル化といった観点から、よりリアルタイム性の高いコミュニケーションツールが重要視される傾向にある。代表例がビジネスチャットで、1対1だけでなくグループ間のコミュニケーションを迅速かつ手軽に取れるため、主要なコミュニケーション手段とする企業が増えている。
これに対し、電話は相手の状況や時間帯を考慮しなければならず、常にやり取り可能というわけではない。しかも本来の用件だけでなく挨拶や世間話を交えるなど、コミュニケーションツールとしては非効率であることが否めない。
その反面、電話は話す口調や声のトーンによって、目の前にいなくても感情や微妙なニュアンスを伝えることができ、よりリアルなコミュニケーションが可能だ。また、会社や部門の代表番号が0AB~Jであることが顧客や取引先の信用獲得につながるという風潮が今なお根強くある。こうした理由から、利用頻度は減少しているものの、ビジネスに必須のコミュニケーションツールであり続けている。
では、企業が今、導入すべき「電話」は何か。オフィスにおけるレガシーな電話機能であるPBXやビジネスホンの最新動向を「クラウドニーズ」「モバイル連携」「UC機能」の3点から紹介する。
働き方改革で増えるモバイル利用「昨年度来、ビジネスホンのリプレースの提案にうかがうと、『クラウド系の商材はないのか』と聞かれる機会が増えている」。こう話すのは、NTT東日本 第一部門 ネットワークサービス担当 担当課長の鈴木健太氏だ。
NTT東の「ひかりクラウドPBX」は、内線通話機能とPBX機能をクラウド上で提供するサービス(図表1)。「ひかり電話オフィスA」「ひかり電話オフィスタイプ」との組み合わせ、またはICT環境のサポート・管理を行う「まるらくオフィス電話セット」での利用で、外線利用もできる。
図表1 「ひかりクラウドPBX」のイメージ
NTT東はどちらかというとオンプレミスの電話システムの販売を得意とするが、ひかりクラウドPBXの昨年度の販売数(ID数)は前年度の約3倍、単月では前年比10倍を超える月もあり、ここに来て急速に数字を伸ばしている。
好調の理由の1つに、“持たざる経営”の浸透がある。
「特に大企業では、デジタルトランスフォーメーションの影響で、余分なIT資産を自社で持たない方向にある」と鈴木氏は指摘する。
オンプレミスのPBXやビジネスホンは、社員の異動や席替えのたびに配線工事や内線の切替作業が発生するが、主装置をクラウド化することで保守やメンテナンスにまつわる負荷を軽減できる。コスト削減を目的とする企業では、電話機は既存の固定電話機のまま、主装置だけクラウド化するケースが多いという。
クラウドPBXが注目されているもう1つの理由が、「働き方改革」だ。
少子高齢化が進み、労働力人口の減少が深刻となるなか、企業にとって働き手一人ひとりの生産性向上は喫緊の課題だ。その解決策として、スマートフォンやタブレットを使って時間や場所に関係なく業務を行える「モバイルワーク」を導入する企業が増えている。
スマホを内線端末として社員間の通話に無料の内線通話を利用したり、外線通話は会社の固定電話の番号で発着信を行えるといったクラウドPBXの機能により、外出先や自宅、サテライトオフィスなど社外にいても、オフィスと同じように電話を利用できる。そうした特徴が、働き方を見直す動きの中であらためて注目されている。
クラウドPBXとFMCサービスを統合したコミュニケーションサービスも登場する。ソフトバンクが7月30日に提供を開始する「ConnecTalk」だ(図表2)。
PBXの老朽化を機に、リプレースではなくクラウドに移行する企業が増えている状況に対応したものだという。
拠点ごとにPBXの設置状況が異なる場合でも、全拠点でシームレスにConnecTalkの内線通話を利用するなど、統合的に管理することができる。
図表2 ConnecTalkのイメージ
また、スマホでオフィス以外の様々な場所で仕事をする際、VoIPの内線通話は音質に対する不満の声が多く聞かれるため、VoLTEによる高品質な通話を実現している。