通信事業者/エンタープライズ向けルーターや次世代ファイアウォール「Juniper SRX」等を提供するジュニパーネットワークスは2016年に、「ネットワーク全体をセキュアにする」というコンセプトに基づいたサイバーセキュリティ対策ソリューション「Software-Defined Secure Networks(SDSN)」を発表し、様々なセキュリティ対策製品と、同社ならびにサードパーティ製品で構築されたネットワークが連携して脅威を防ぐ仕組みを提供してきた。
SDSNの概要(Software-Defined Secure Networks)の概要
ネットワーク内部の通信を監視して、侵入してきた脅威を検知し、その情報を基にネットワークを自動的に制御。感染端末を隔離するためのポリシーをスイッチやルーターに適用するといった手法で脅威を食い止める。
このSDSNで重要な役割を担っているのが、クラウド型マルウェア保護サービス「Sky Advanced Threat Prevention(ATP)」である。Sky APTは静的分析やサンドボックスの機能を持ち、ファイアウォールのSRXと連携してトラフィックを監視してマルウェアやC&Cサーバーとの不正通信を検知する。
ジュニパーは今回、このSky APTと同様の役割を果たすオンプレミス型ソリューション「Juniper APT(JAPT)」をリリース。クラウド型で使えるSky APTとJAPTの2つの選択肢を用意したうえで、さらにカーボン・ブラックのEDRとの連携を行うと発表した。
ジュニパーネットワーク 代表取締役社長の古屋和弘氏(左)と
カーボン・ブラック・ジャパン カントリーマネージャーの西村雅博氏
代表取締役社長の古屋和弘氏は、「共同で、検証やデモを行う環境を構築し、連携ソリューションを開発する」と話した。すでに両社のソリューションを販売しているパートナーが複数いるため、「今年中には、すべてのパートナーがSky APTとJAPTを取り扱えるようにしたい」とし、連携ソリューションの販売体制を強化する考えだ。
互いの「できないこと」を補い合う
今回の連携の狙いを一言でいえば、「互いの“できないこと”を補い合う」ことで、より強固なセキュリティ対策ソリューションを実現するということになる。
EDRとは、PCやスマートデバイスといったエンドポイントにおける不審な振る舞いを検出し、調査を行うソリューションだ。エンドポイントの動きを可視化し、潜在的な脅威を見つけ出し、さらに、リモートから感染端末の隔離や調査も行える。カーボン・ブラック・ジャパンのカントリーマネージャーである西村雅博氏は、EDRを生み出したのは同社CTOを務めるMichael Viscuso氏であると紹介。つまりカーボン・ブラックは「EDRのパイオニア」というわけだ。
今回の両社の連携では、カーボン・ブラックのEDR「Cb Response」と、先述のSky APT、JAPTが連携して脅威をブロックする。ネットワークをカバーするSky APT/JAPTと、エンドポイントを監視するCb Responseとの間で脅威情報を共有し、ジュニパーのSDNあるいはCbから対策を実行するという仕組みだ。
SkyAPTとCb Responseの連携例
例えば、Cb ResponseからSky APTが脅威情報を自動的に取得し、SRX経由で感染ホストの通信を遮断する(上)。あるいは、JATPがCb RESPONSEに情報を共有して、エンドポイントで対策を実施するといったことが可能だ。なお、Sky APTとJAPTでは現時点で機能差があるが、今後の開発によってその差は埋まるという。
この連携によって両社は、ネットワークからエンドポイントまですべてをカバーし、不審な挙動を監視して自動的に対処できる統合ソリューションの開発を目指す。