『2015年農林業センサス』(農林水産省)によると、基幹的農業従事者の平均年齢は67.0歳で、65歳以上の割合が64.6%となっています。また、1995年に414万人だった農業就業人口は、20年後の2015年には210万人と半減しました。
農家に定年はありませんが、一般的には70歳前後で農業から離れるケースが多いと言われており、今後も大量の離農が見込まれます。
その結果、耕作放棄地も問題となっています。もちろん、高齢となった農家に後継者がいれば耕作放棄地は発生しません。しかし、日本の農家は、農業以外の収入が主な「第2種兼業農家」が多く、その子息は会社勤めをしている、あるいは、すでにその地域を離れている、などのケースも多くみられます。そこには、「儲からない農業は継ぎたくない(継がせたくない)」という意識も働いているようです。
なぜ、儲からないのか。
我が国の代表的な農作物であるコメのケースで考えてみましょう。
これまで我が国の農業政策は、地方の過疎対策の意味合いもあり、減反政策や補助金などで生産性の低い小規模農家・兼業農家の生活を守る、という保護政策をとってきました。
減反政策とは、「コメの作り過ぎによる価格下落を避けるため、生産量を抑える」ということです。コメの生産量を抑えることにより、補助金などの補填がなされるため、農家は生産性向上の努力などをしなくなります。
その結果、政策による手厚い支援がなくなれば立ち行かなくなる小規模農家・兼業農家が多くなり、産業としての我が国の農業の競争力は衰えてしまいました。
しかし、TPPを例に挙げるまでもなく、そのような保護政策をいつまでも続けるわけにはいきません。1970年に始まった減反政策は、本年2018年から廃止となりました。
減反政策廃止とはいえ、他にも農家に対する支援は残っていますので、すぐに「多くの農家がどうにかなる」というわけではありません。しかし、減反政策を実施していた間にも、日本人のコメの消費量は下がり続け、コメの価格も下落しています。他の補助金なども、いずれ削減されるでしょうから、生産性の低い農家の離農は続くでしょう。
現在、全国の耕作放棄地の面積は42.3万ヘクタールとなっており、東京の面積(21.9万ヘクタール)の約2倍もありますが、このままでは、さらに耕作放棄地が増えていくことは確実です。
大規模農家は増えているここまで、日本の農業に関する暗い話題が続きました。しかし、悪い話ばかりではありません。
図表1 経営耕地面積規模別の経営耕地面積集積割合
出典:2015年農林業センサス
(http://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/2015/pdf/census_15k_20160427.pdf)
上記のように、この10年で、100ヘクタールを超える耕地を持つ大規模農業経営体は8.2%と、倍近くに増えています。また、5ヘクタールを超える耕地を持つ農業経営体が57.9%と、1経営体あたりの規模は確実に大きくなっています。
このことは、離農する農家の耕地が、継続する農家に集約されていることを表しています。つまり、保護産業であった農業が、規模を拡大して効率化し、成長していく過程と捉えることができるしょう。
ただ、規模の拡大と言っても、アメリカやオーストラリアのように、広大な農地を管理する、というわけにはいきません。日本の農地は、ほとんどが中山間地にあり、「農地の集約」と言っても、「飛び地の集合体」になってしまうケースが多いのです。
単純に考えると、「農地が増えた分だけ、人手も必要」となり、規模のメリットが働かない状態となってしまいます。そこで、ICTの力を使って、省力化・効率化、そして高品質化を図ろうとする官民挙げての取り組みが重要となるのです。