来年、創業100周年を迎えるパナソニック。大きな節目を前に、元日本マイクロソフト社長の樋口泰行氏を代表取締役専務に招くなど、最近、変革に向けた積極的な動きが目立つが、そのキーパーソンの1人が元SAPの馬場渉氏だ。
今年4月1日付けで新設されたビジネスイノベーション本部の副本部長を務める馬場氏は2017年7月26日、「パナソニックにおけるイノベーション量産化技術開発の取り組み」と題した記者説明会を行った。
限られた“天才”に頼ることなく、IoTによるイノベーションをシステミックに“量産化”するための仕組みづくりを、パナソニックは現在進めている。
AWSやAzureの徹底活用で、固有の価値創出にフォーカスそのテクノロジー面での中核となるのが、パナソニック独自のIoTプラットフォームといえる「Panasonic Digital Platform」だ。IoTサービスの提供に必要なUI、AI、分析、セキュリティなどの仕組みを備えた社内向けプラットフォームである。
馬場氏によれば、IoTサービスの開発において、固有の価値創出に注ぐことができるパワーは5%程度にすぎないというのが、一般的企業の“現実”だ。
「まず技術インフラを用意するだけで、半分かかる」。この部分については今後、「パブリッククラウドの成長で、どんどん減少していくだろう」が、それでも「パブリッククラウドを買ってくれば、すぐIoTサービスができるかといえば、現実的にはできない」。
顧客IDとの紐付けや機器制御の仕組みなど、「ユーザー企業は、パブリッククラウドの上に45%くらいの労力をかけて、初めてサービスを提供できる」からだ。
パナソニックがプラットフォームを開発する理由
そこでパナソニックは4年前からクラウドプラットフォームの開発に取り組んでいる。AWSやAzureといったパブリッククラウドを「徹底的に活用」(馬場氏)し、その上でパナソニックのIoTサービスに必要な各種機能を現在108のAPIで提供している。なお、個人情報はパブリッククラウドには置いていない。
社内にAWSやAzureの専門家を置きながら、パナソニックのIoTサービスに共通して必要な機能をプラットフォーム側で用意。固有の顧客価値の創出にかけられるパワーを圧倒的に増やそうというのが、同社のイノベーション量産化技術の肝の1つである。
Panasonic Digital Platformの全体像