アップルが2013年に「iBeacon」をリリースした後、O2Oソリューションとして注目が集まったビーコン。だが、期待に反して小売業では目立った成功例を生み出せなかった。
ビーコンは廉価なBLE(Bluetooth Low Energy)発信機やスマートフォンを使って、位置情報連動サービスを低コストに実現できるのが利点だ。そのため来店客のスマホにセール情報やクーポンを送信するなどの使い方が検討されたが、運用の煩雑さが普及を妨げる要因となった。
最大の課題は(1)壁や天井、商品の陳列棚などに多くのビーコン端末を設置しなければならず、設定と動作確認、電池の残量管理や交換、盗難・紛失対策等のメンテナンスに手間がかかることだ。また(2)来店客にアプリをインストールしてもらう必要があることも障害になった。これは、小売業のみならず観光や娯楽施設など一般消費者をターゲットとする領域では共通の課題となる。
このようにBtoCの利用シーンでは苦戦が続くビーコンだが、最近になって新たな用途で再び脚光を浴びつつある。従業員や機器の所在・動線管理を行う業務効率化の用途だ。スマホを持つ従業員やBLEタグを付けた人・モノの現在位置と動きを可視化したり、動態データを分析して業務効率の改善に役立てるといった使い方である。
仮想のビーコンを空間に配置業務効率化の用途であれば、前記(2)の障害は無くなる。残るは(1)の課題だが、これを解決するソリューションの提供を始めたのがユニアデックスだ。少数のビーコン端末を設置するだけで、その周辺空間に多数の「仮想ビーコン」を配置するというもの。管理画面から一括して設定管理が行えるため、手間をかけずに運用できる。
この仮想ビーコンは、シスコシステムズが今年から国内で提供を始めた「Cisco Beacon Point」を使ったものだ。Cisco Beacon Pointとは無線LANアクセスポイントのような形状の物理デバイスで、ビーム状のBLE電波を生成して、周辺の空間上に仮想ビーコンを配置することができる。天井や壁にBeacon Pointを設置し、インターネットを経由してクラウド上の管理システム「Cisco Beacon Center」に接続すれば、画面上で、施設マップ上の任意の位置に仮想ビーコンを配置したり移動したりすることが可能だ。
ユニアデックスのネットワークソリューション統括部・次世代技術推進部1課 課長 片澤友浩氏 |
多数の物理ビーコンを設置するのとは異なり、現場での設定や変更作業は不要。加えて、盗難や紛失の心配もなく、電池残量を気にする必要もない。ユニアデックスの片澤友浩氏は「Beacon Pointを取り付けてLANからクラウドにつなげるだけでよい。仮想化することで運用管理の課題が解決できる」と話す。
シスコによれば、Beacon Pointの推奨密度は約230㎡当たり1台で、かなり広範囲に仮想ビーコンを配置することが可能だ。1台で8個の仮想ビーコンを生成することができる。