「人類が活用できていない、最後の未開拓の周波数帯」――。NTT先端集積デバイス研究所で主幹研究員を務める矢板信氏は、テラヘルツ波をこう紹介する。
NTT先端集積デバイス研究所 光電子融合研究部 主幹研究員 矢板信氏
一般的に0.1~10THzの周波数を意味するテラヘルツ波。この上の周波数というと、赤外線だ。つまり、電波ではなく光になる。電波と光の中間の性質を持つテラヘルツ波は、発生させることも検出することも技術的に困難であったため、長らく“人類未踏”の領域であり続けてきた。
しかし遂に、この未踏の地が開拓されようとしている。NTT、富士通、NICTは昨年、世界初となる300GHz帯を用いたテラヘルツ無線用小型送受信機を開発。1mを超える伝送距離で20Gbpsのエラーフリー伝送と、直交偏波による約40Gbpsでのデータ伝送に成功した。併せて実施した大容量コンテンツのキオスクダウンロードの実験では、DVD1枚分のデータを約3秒でダウンロードできたという(図表1)。
図表1 大容量コンテンツをタッチでダウンロード
この共同研究は、総務省による委託研究「超高周波搬送波による数十ギガビット無線伝送技術の研究開発」の一環。矢板氏によれば、総務省のリードによりテラヘルツ無線に注力する日本に加えて、ドイツや米国でも研究が盛んだという。
IEEEでの標準化も始まっている。IEEE 802.15委員会のTG3d(Task Group 3d)として、2014年3月から標準化作業がスタートしており、すでに詰めのフェーズに入りつつあるそうだ。