「1台のLoRaWANゲートウェイ(基地局)あたり、100台のエンドデバイスを接続しても、問題なく運用できることが検証できた」
これは、NTTドコモの証言だ。接続数の限界値を試した実験ではないが、ドコモがLoRaWANを活用したIoTサービスに求められる収容数の1つの目安としていた100台までなら問題なく接続できたという。
同社は、2017年4月から「ドコモIoT/LPWA実証実験環境」をスタートさせるにあたり、R&Dセンターで昨年11月から今年3月にかけて、LoRaWANの実験を重ねてきた。実際に気温、湿度、CO2濃度、PM2.5などのセンサーをエンドデバイスとして作り込み、ゲートウェイに接続した。
100台という数は、あくまでも目安であって、全てのIoTサービスにあてはまるわけではない。それぞれのIoTサービスの要件、例えばデータサイズやデータの送信頻度、許容されるデータ欠損率などによって、100台では多すぎたり、逆に100台以上接続できるケースも出てくる。
1台当たり数100ミリ秒気を付けたいのは、ドコモは実験を重ね、設定をチューニングする中で、100台を達成していることだ。はじめから誰もが簡単に、トラブルなく100台のデバイスを接続できるわけではない。
それでは、多数デバイスの接続にあたり、どのような点を考慮する必要があるのだろうか。
複数台のエンドデバイスを接続する実証実験は、アズビル金門も行っている。同社は、日本IBM、菱電商事などと共同で、北海道に設置された水道・ガスメーターからLoRaWANでデータを取得した。実際のフィールドだったため大規模な実験は難しく、1台のゲートウェイあたり3台と、接続した水道・ガスメーターの数こそ少ない。しかし、その検証を通じて、多数接続のポイントが見えてきたという。
「3台のメーターから、全く同じタイミングでデータを上げると、1台分のデータしか取得できない。残りの2台は再送モードに入る。再送制御についてしっかり考えておく必要がある」と、アズビル金門の奥野氏は説明する(図表)。
図表 水道メーター検針の実証実験で分かったこと
2台の再送が、再び全く同じタイミングになると、片方のデータしか取得できないため、2回目の再送を行わなければならない。そのようなイレギュラー処理を考慮する必要があるというのだ。
これが100台だったら、2回の再送では済まない。奥野氏は、「100台を接続する場合、再送シーケンスを10回で終わりにしていると、残りの89台の水道・ガスメーターからはデータを取得できなくなることなどが分かった」と言う。
再送シーケンスの回数を増やすという方法もあるが、LPWAのメリットである省電力を実現するためには、できるだけ再送回数は少ないほうがいい。そこで各メーターのデータ送信にかかる時間を見積もり、同じタイミングにならないよう、送信タイミングをずらしたりすることになる。
「メーター1台当たりの通信時間は、数百ミリ秒あれば十分。ほんの少しだけデータ送信のタイミングをずらせばいい」と奥野氏。
その手法はいくつかある。その1つとして同氏が挙げるのは、「1台のゲートウェイあたり100台のメーターを接続する場合、100ミリ秒ずつデータをあげる順番をずらしたうえで、送信失敗後、リトライする時間をランダムに変える方法」だ。
前述のドコモの100台という接続数も「100台接続した時、どのようにデータ送信のタイミングをずらしていくと、データ欠損を最適化できるかを考慮」して実現したものだという。LoRaWAN環境の構築には、こうしたノウハウも重要となる。