モバイルトラフィックが急速に増え続けるなか、重大な課題であり続けているのが、「移動通信用の新たな周波数をどうやって確保するか」である。
そこで5Gではミリ波帯も活用予定だが、そもそもミリ波帯はこれまで移動通信には向いていないとされてきた周波数帯。そんなミリ波帯を使わざるを得ないほど、逼迫しているわけだが、実はまだ移動通信に適した周波数は残されている。それはテレビホワイトスペースだ。
WTPのNICT(情報通信研究機構)のブースには、ホワイトスペースに対応したLTEフェムトセル基地局が展示されている。
ホワイトスペース対応LTEフェムトセル基地局(右上)とホワイトスペースLTEスマートフォン、ホワイトスペースLTEモバイルルータ |
ホワイトスペースとは、テレビ放送用に割り当てられているが、場所や時間帯によっては未使用の帯域のこと。具体的にはUHF帯の470-710MHzがホワイトスペースだ。このホワイトスペースを「LTEに使ってしまおう」というのが、NICTが今回開発したLTEフェムトセル基地局である。
地下街やイベントホール、屋内の会議室など、トラフィックが集中するエリアに、このホワイトスペース対応LTEフェムトセル基地局を設置。通常のLTEとハンドオーバーしながら通信できる。
NICTでは以前からホワイトスペース用の技術開発に注力しているが、屋内にも簡単に設置できるよう、小型・軽量化したのが今回のポイント。基地局のサイズは228×283×57mm、重量は約2.5kgとなっている。
ホワイトスペース対応LTEフェムトセル基地局などの特徴 |
説明員によると、「プロトコルなどが原因ではなく、試作機固有の要因で気温が上がると通信が不安定になるといった問題もある」というが、実用化に向けた技術的なハードルはほぼクリアしているとのこと。つまり、実用化に向けて残る課題は、ホワイトスペースとして活用できる場所や時間を特定するデータベースの整備や、放送事業者側との調整などの運用スキームづくり。
このため、ホワイトスペース対応LTEフェムトセル基地局の実用化時期については、「NICTでは何も言うことができない」(説明員)とのこと。ホワイトスペースの本格活用に向けて、一刻も早い環境整備が期待される。