KDDIがLTE高速化技術「キャリアアグリゲーション」を一番乗りで導入した理由とは?

KDDIは新技術キャリアアグリゲーション(CA)を活用し、下り150MbpsのLTEサービスを提供し始めた。国内の携帯電話事業者でCAを導入したのはKDDIが初。一番乗りでCAを導入した背景には、同社の周波数事情もある。

KDDIは5月下旬から、LTE-Advancedの基本技術の1つ「キャリアアグリゲーション(CA)」を利用した下り(受信時)最大150Mbpsの高速データ通信の提供を開始した。NTTドコモやソフトバンクモバイルもCA導入に向けて準備を進めており、2014年度はCAによる高速化が一気に進むことになりそうだ。

キャリアアグリゲーション(CA)とは?

CAはLTEの電波(搬送波)を複数本束ねて使う(同時に受信する)ことで仮想的に広帯域化し、高速通信を可能にする技術である。

例えばCAでLTEの20MHz幅の搬送波を複数本束ねれば現行のLTEの150Mbpsの倍、300Mbps以上の高速データ通信を実現することができる。CA が3Gの後継となる第4世代移動通信システム(4G)の必須技術といわれるのはそのためだ。

ただし、20MHz幅の搬送波2本分、40MHz幅以上の帯域を携帯電話事業者が利用できるのは3.4-3.5GHz帯の運用が開始される2016年と、やや先になる。

今回KDDIが提供を始めたサービスは、既存の携帯電話の周波数帯、具体的には800MHz帯と2.1GHz帯の各10MHz幅のLTEの搬送波をCAで組み合わせて20MHz幅とし、現行LTEの最高スペックに相当する下り最大150Mbpsを実現するものだ。

CAにはLTEの5、10、15、20MHz幅のいずれの帯域幅の搬送波でも、また離れた周波数帯の搬送波でも束ねて利用できる機能があるため、こうした運用が可能なのだ。ちなみに現行のCAの規格では異なる周波数帯で束ねられるのは2波までとなる。

既存割当でもLTE帯域の組み合わせによっては150Mbpsを超えるサービスが提供できる可能性があるが、現在のところ端末規格の制約から、CAによる高速化は下り最大150Mbps が上限だ。これ以上の高速化が可能になるのは、下り最大300Mbpsまでの高速データ通信に対応できる「カテゴリ6」対応端末の登場が見込まれる年末以降となる。

また、現在CAが実用化されているのは下り側だけなので、KDDIのサービスの場合、上り(送信時)の最大通信速度は下り75MbpsのLTE(10MHz幅)と同じく最大25Mbpsとなる。

WiMAX 2+との2本柱

既存帯域へのCAの導入で先陣を切ったのは韓国で、昨年夏から3事業者が異なる帯域の10MHz幅のLTEの搬送波を組み合わせて、下り最大150Mbpsのサービスを提供している。今回KDDIが開始するCAは、商用サービスとしてはこれに次ぐものとなる。

CAによる150Mbpsサービスが利用できるのは、当初は2014年夏モデルの「Xperia ZL2 SOL25」「isai FL LGL24」「GALAXY S5 SCL23」「AQUOS SERIE SHL25」「URBANO L03」のスマートフォン5機種とタブレット端末の「Xperia Z2 Tablet SOT21」の計6機種である。このうち5月下旬発売のXperia ZL2 SOL25が、CA対応機の第1弾となる。

キャリアアグリゲーションに対応した2014年夏モデルを紹介するKDDIのWebページ
キャリアアグリゲーションに対応した2014年夏モデルを紹介するKDDIのWebページ

これらの6機種はCAだけでなく下り最大110Mbpsの高速データ通信が可能なUQコミュニケーションズのWiMAX 2+網に対応した初のスマホ/タブレットでもある。CAとWiMAX 2+が、KDDIのスマホ/タブレットの高速化の2本柱である。

WiMAX 2+はLTEの技術規格の1つTD-LTEの互換システムであることから、スマホ/タブレットの使い勝手はLTEと統合されており、ユーザーは特に意識せずに利用できる。料金もLTEに一本化され、WiMAX 2+を使っても付加料金は不要だ。

月刊テレコミュニケーション2014年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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