L2/L3の領域では、すでに実環境への導入が始まっているSDN(Software-Defined Networking)。では、L4-L7のSDN化に関しては、どうなっているのだろうか? なかなか具体的な議論が出てこないことにやきもきしている人も少なくないだろうが、F5ネットワークスジャパンが2013年12月11日、L4-L7のSDN化のためのアーキテクチャ「Synthesis(シンセシス)」を発表した。
F5ネットワークスジャパン 代表取締役社長 アリイ・ヒロシ氏 | F5ネットワークスジャパン プロダクトマーケティングマネージャ 野崎馨一郎氏 |
Synthesisの狙いについてアリイ・ヒロシ社長は、「アプリケーションとネットワークをつなぐ」と話す。「L2/L3でSDN化がかなり進むなか、企業内に何千とあるアプリケーションは、どう対応していくべきなのか。現在はポイントソリューションでかなりのコストをかけて対応している。これではアプリケーション全体には対応できない。アーキテクチャビジョンの中で、L4-L7のSDN化をするべきではないか」
クラウドオーケストレーターやL2/L3 SDNと連携し、Software-DefinedなL4-L7サービスを実現しようというのが、Synthesisの目指すところだ。F5では、「Software Defined Application Services」という言い方をしている。
「確実に50~60%以上のコスト削減が見込める」
Synthesisは具体的には次のコンポーネントで構成される。まずは同社のBIG-IPシリーズ、そして外部のオーケストレーターやパブリッククラウドとの連携、BIG-IPシリーズの集中管理などを担うBIG-IQである。Synthesisを実現するための新製品というものは特に発表されておらず、既存の製品で構成できる。
L4-L7のSDN化とはつまり、ロードバランサーやファイアウォール、ADC、WAFなどの機能をリソースプール化し、アプリケーションの要求に応じて自動でプロビジョニングできるようにすることだが、ここでポイントの1つとなるのは、どれだけ大規模なリソースプールを提供できるかである。プロダクトマーケティングマネージャの野崎馨一郎氏は、F5なら最大で20Tbps、92億コネクションのキャパシティを提供できると紹介。「驚異的なパフォーマンスを誇る」とした。
また、他のオーケストレーターとの連携については、OpenStackやVMware、シスコが11月に発表したACIなどをサポートする(関連記事:「アプリが何を要求しているのか、ネットワークが理解できる」、シスコがデータセンター向け新インフラ発表)。
Synthesisの展開にあたり、ライセンス体系も変更される。従来は製品ベースの複雑なライセンス体系だったが、11種類のリファレンスアーキテクチャに則したパッケージ型のライセンス体系を用意する。DDoS攻撃対策の「DDoS Protection」、オンプレミスのリソースが逼迫したときに一部のトラフィックをパブリッククラウドに逃がす「Cloud Bursting」などのユースケースごとにパッケージが提供される。
また、この新しいライセンス体系は、「確実に50~60%以上のコスト削減が見込める」(野崎氏)というのも大きな特徴だ。パッケージ化によるまとめ買い、リファレンスによる導入の簡素化が、コスト削減に寄与するという。