
(左から)昭文社ホールディングス 執行役員 投資戦略室長 宇津井聡史氏、
ソニーマーケティング 事業開発センター 事業企画部 企画課 プロデューサー 安彦剛志氏、
NEC 社会公共インテグレーション統括部 DXソリューション企画グループ プロフェッショナル 久保田富美氏
――音声AR(拡張現実)の概要と最新動向について教えてください。
安彦 音声ARとは、位置情報と連動して音声コンテンツを配信する技術です。特定の場所に近づくとスマートフォン等から音声が再生され、その場ならではの体験を楽しめます。
国内では、ソニーの技術を活用した「Locatone(ロケトーン)」やエイベックスの「SARF(サーフ)」といった音声ARサービスが登場しており、徐々に認知度も高まっています。ソニーマーケティングでは、Locatoneを活用した200件以上のプロジェクトを支援してきました。
宇津井 特に地方自治体からのニーズが高いです。例えば三重県名張市では、ソニーマーケティングと昭文社ホールディングス(以下、昭文社HD)の子会社・マップルで連携し、期間限定の音声AR企画を実施しました。人気アーティストとコラボし、市内の各スポットを訪れると、スマートフォンから楽曲が再生されます。
観光の「一極集中」解消へ
――今年7月には、ソニーマーケティング・昭文社HD・NECが幹事企業を務める「音声ARコンソーシアム」が発足しました。3社に加え、JTBやNTT西日本ら9者も参画していますが、コンソーシアム設立の狙いは。
安彦 観光には「一極集中」という課題があります。訪日外国人は、「とりあえず清水寺に行こう」というように、有名な観光地に集中しがちです。知名度の高さも理由ですが、地方では多言語対応などの受け入れ体制が十分に整っていないことも一因です。現地を案内できる人材も限られ、知名度の低い観光地に立ち寄るハードルが高いのです。
これは非常にもったいないです。音声ARで母国語での観光案内やサポートを受けられたり、観光スポットへの移動中に音声ARで物語を楽しめたりすれば、日本の楽しみ方はもっと広がるはずです。
また、現在も音声ARを活用した観光DXは進んでいますが、その多くは地域や施設ごとの個別の取り組みにとどまっています。今後は、訪日外国人を含む旅行者に新たな旅行体験を提供できるインフラとして、音声ARを全国へ広げていく必要があると考え、コンソーシアムを設立しました。
――ソニーマーケティングとしては、Locatoneのさらなる普及拡大を目指す狙いもあると思いますが、昭文社HDとNECはどのような狙いでコンソーシアムに参画し、自社の強みやノウハウをどう生かそうと考えていますか。
宇津井 昭文社HDは創業以来、地図事業を中核としてきた会社です。インターネットが普及する以前は、「どこに何があるか」という情報を書籍として提供することに価値がありました。しかし、Googleマップ等の普及により、現在は誰もが地図情報を簡単に取得できるようになりました。
そこで昭文社HDが目指しているのが、「地図の上にどんな情報を付加するか」です。我々が持つ地図データと音声コンテンツを組み合わせることで、新たな価値を生み出せると考えています。例えば、先に触れた観光用途に加え、災害時には最寄りの避難所や避難経路などを音声で案内するといった活用も考えられます。
久保田 NECはこれまでも自治体向けのソリューションを提供しており、地域活性化を支援することは当社の重要なミッションの1つです。
ただ、先ほども話があったように、訪日外国人は増えているものの、有名観光地に人が集中し、周辺地域へ十分に人が流れていません。こうした課題の解決策を模索する中で、音声ARの可能性に大きな魅力を感じ、コンソーシアムに参画しました。













