「digital or die」――。ソフトバンクの孫正義社長が、7月23日に行われたプライベートイベント「Softbank World 2013」の基調講演の中で発したメッセージの1つがこれだ。
「デジタル化をするか、もしくは自社の将来がないというところに追い込まれるか。もっと積極的にデジタル化していかなければならない」と孫氏は語った。
何のためにデジタル化を推進する必要があるかといえば、それは「世界へ挑む」ためだ。「この20年間、日本経済は長らく停滞してきた。少子高齢化が進む日本において、世界に打って出ることは、まさに必要不可欠である。私は、挑戦する者に未来は開かれると考えている」
そして孫氏はまずソフトバンク自身の世界への挑戦について話し始めた。米国3位の携帯電話事業者、スプリント・ネクステルの買収である。米Dishによる対抗買収提案もあり「やきもきした」というが、7月11日に遂に子会社化が完了した。
「これまで日本で3位か2位かとやってきたが、もうそんな国内での議論はどうでもいい。世界で3位だ。計り方の物差しを変えようと言っている」
スプリント買収によるモバイル事業における売上高は世界3位へ |
スプリント買収後のソフトバンクグループのユーザー数は9804万。「ドコモをはるかに凌いで、米国1位のベライゾンに迫るところまで来た」。ベライゾンの加入者数は9893万(3月時点)である。
また、このスプリント買収は、世界へ挑戦する日本企業に貢献していくうえでも、大きな意味を持っているという。「ソフトバンクだけでは海外拠点はほんの少ししかないが、スプリントは世界30カ所で事業を行っている。また、ネットワークは全世界165カ国に直接つながっているという強みがある」。このため、「ソフトバンク-スプリント連合軍で、世界へのさらなる挑戦を支援できる」とした。
ワークスタイル変革で営業担当者の訪問件数が2.5倍に
ソフトバンクの世界への挑戦は今から本格化するところだが、デジタル化については従来から「自ら率先して試してきた」。
例えば、ビッグデータの活用だ。ソフトバンクでは、月7.5億件のアプリ通信ログを解析し、基地局の建設計画に活かしている。「このようなビッグデータの活用は我々が世界で初めて。ソフトバンクの接続率が改善した背景には、こうした科学的アプローチがある」と説明した。TwitterやFacebookへの投稿を解析し、ユーザーが実際に電波改善を実感しているかどうかも調査しているという。
アプリ通信ログというビッグデータを電波改善に活用しているソフトバンク |
また、ソフトバンクでは全社員にiPhoneとiPadを配布し、ワークスタイル変革にも積極的に取り組んでいる。「我々はいつでもどこでも、会社のデスクにいるのと同じように様々な仕事ができる。その結果、例えば法人営業担当者の訪問件数は2.5倍になった」とその成果をアピールした。