<連載>6G時代の新・業界地図【6G徹底解説】XGMF中村氏「課題起点で6Gマネタイズへ 5Gの成功が6Gを花開かせる」

2030年頃の商用化が見込まれている6Gでは、AIやアッパーミッドバンドの活用、NTNやISAC(通信とセンシングの融合)などが重要なテーマの1つになっている。XGモバイル推進フォーラム(XGMF)で6G推進プロジェクトリーダーを務める中村武宏氏は、まずは5Gの利活用を着実に広げていくことが、最終的に“6Gマネタイズ”につながると強調し、その実現に向けた業界横断の取り組みをより一層強化していくと力を込めた。

中村武宏氏

XGMF 6G 推進プロジェクトリーダー NTTドコモ CSO 兼 コーポレートエバンジェリスト 中村武宏氏

——6Gへの期待感が一時期に比べて薄れているという声もありましたが、今年3月に開催された「MWC26 Barcelona」では、6G関連の展示も目立ちました。

中村 昨年のMWCを振り返ると、6Gへの関心が衰えたというよりも、6Gを前面に出す企業がまだ少なかったという印象です。5Gマネタイズが依然として途上にあり、多くの企業が6Gを積極的に掲げることを控えていたのだと思います。

ただ今年はその流れを打ち破るように、主要各社が6Gを前面に打ち出しました。ようやく業界全体として「6Gへの本格移行」をうかがわせる雰囲気が醸成されてきたと感じています。来年以降は6G関連の展示がさらに増え、今後6Gに向けた機運は一層高まっていくでしょう。

6Gは“AI一色”

——現在策定中の3GPP Release 20(以下、Rel.20)では、5G Advancedのさらなる機能拡張と並行して、6Gに関する技術検討も始まっています。

中村 Rel.20は、規格策定に先立って実施される「Study Item」と呼ばれる初期フェーズに位置付けられています。2027年に始まるRel.21で、Rel.20で議論された内容が具体的な仕様へと落とし込まれ、2029年前半に最初の標準仕様が固まり、2030年から6Gの商用化が始まる見通しです。

——5G Advancedでは無線インターフェースへのAI/ML(機械学習)の適用などが議論されていましたが、6GにおいてもAIは引き続き重要なテーマの1つとなっています。

中村 6Gはまさに“AI一色”で、「AI for Network」と「Network for AI」という両面で議論が進んでいます。前者は、AI活用によってネットワーク運用を自動化・最適化し、人手やコストを削減することを目指しています。

 AI for Networkは通信事業者にとって喫緊の課題であり、すでに様々な取り組みが進められていますが、6Gではこうした考え方を後付けではなく、最初から前提条件としてアーキテクチャに組み込んでいくことが想定されています。

後者のNetwork for AIに関しては、フィジカルAIも含めた多様なAIサービスが次々に登場する時代を見据えながら、「AIのためのネットワークがどうあるべきか」「どのような仕組みや工夫が必要になるのか」といった議論が今後さらに深まっていくでしょう。

具体的な方向性としては、高速・大容量化や低遅延化は継続的に進んでいくと考えています。大きなブレイクスルーは起きないかもしれませんが、MIMOの高度化など、細かな技術革新を積み重ねることで、トータルとしての性能を引き上げていく流れになると思います。

あわせて期待されるのが、新たな周波数帯の活用です。より広い帯域幅を利用して通信容量やスループットを高めていく取り組みが進むと見ています。

アッパーミッドバンドへの期待

——6Gではどの周波数帯が主力になりそうですか。

中村 グローバルではアッパーミッドバンドへの期待が大きいです。ミリ波についても何とか普及を進めたいところですが、各国はできるだけ低い周波数帯で、なおかつ広い帯域幅を確保できるところを探しています。その中でも、6~8GHz帯が有力な候補として注目されています。

6~8GHz帯は大きく2つに分けられます。その1つが6425~7125MHz帯です。この帯域は、2023年に開催されたWRC(世界無線通信会議)-23において、第一地域(欧州・アフリカ)全体と第二地域(南北アメリカ大陸)の2カ国でIMTバンド(移動通信システム用周波数)として特定されました。世界的に見ても有望視されている帯域です。

一方、7125~8400MHz帯については、2027年に開催予定のWRC-27における主要議題の1つになっています。今後の方向性は、WRC-27での議論の結果に大きく左右されることになるでしょう。

——国内では6~8GHz帯はすでに様々な用途で利用されており、他のシステムとどう共用・共存していくかが課題になります。

中村 その通りで、6~8GHz帯はすでに公共業務や放送分野などで使われています。日本だけがこの周波数帯を6Gに活用できない状況になれば、世界から大きく遅れを取ってしまう可能性があります。ですので、総務省や他業界との調整を進めながら、できるだけ早いタイミングで広い帯域幅を6G向けに確保していく必要があります。

そのための議論の場をつくることも、XGMFの重要な役割だと考えています。世界の動向と日本の状況を整理したうえで、何を優先してどのように進めるべきかについて、方向性をすり合わせていきたいと考えています。もちろん、すぐに結論が出る話ではなく、他業界との調整という大きな壁もありますが、それを避けていては6Gの本格普及は難しい。だからこそ、挑戦するしかないと思っています。

中村武宏(なかむら・たけひろ)氏

モバイル通信分野の国際標準化を長年にわたり牽引してきた第一人者であり、現在はXGモバイル推進フォーラム(XGMF)の6G推進プロジェクトリーダーとして、日本の6G戦略策定や国際連携の強化に尽力。豊富な国際会議での経験と幅広いネットワークを活かし、世界と日本をつなぐ架け橋として活躍中。NTTドコモCSO(Chief Standardization Officer) 兼 コーポレートエバンジェリスト。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。