地上網とNTNをシームレスに連携
——NTN(非地上系ネットワーク)との連携・融合も、6Gを語るうえで欠かせないポイントの1つです。
中村 NTNについては、5G以前から議論が進められてきました。ただ、5Gでは既存のTN(地上系ネットワーク)にNTNを後付けする形だったのに対し、6Gでは初めからNTNを組み込むことを前提にネットワーク全体を設計していく考え方になります。これにより、NTNとTNとの連携がよりスムーズになり、両者が一体化されたネットワークへと進化していくのではないでしょうか。
NTNには、GEO(静止軌道)衛星やLEO(低軌道)衛星、HAPS(成層圏通信プラットフォーム)といった複数のレイヤーがあります。これらをうまく統合していくことも重要になります。そうすることで、ユーザーは今どのネットワークにつながっているのかを意識することなく、“いつでもどこでも”通信を利用できるようになります。そうしたシームレスな接続を実現するネットワークを目指すべきだと考えています。
——モバイル網の電波が届きにくいエリアでも、新たな産業が生まれる可能性があります。
中村 そこがまさに取り組むべきポイントであり、各業界と連携しながらユースケースを開拓していかなければなりません。これまで人がいない場所は通信エリアの対象外でしたが、NTNによってそうした場所もカバーできるようになれば、新たな産業の創出だけでなく、通信事業者の収益機会のさらなる拡大にもつながります。
例えば、人が常駐しない場所に環境センサーを設置し、様々なデータを収集・監視するといった用途は、その代表例と言えるでしょう。また、これまでエリア化が難しかった海上をカバーできれば、船舶の乗客の利便性向上はもちろん、乗組員への業務支援など、新たなサービス提供も可能になります。さらに近年は、地政学リスクの高まりを背景に、防衛分野からの期待も強まっています。これは日本に限らず世界的な潮流であり、今後こうした領域での活用も広がっていくと考えられます。
ISACは“精度”がカギ
——通信とセンシングを融合・統合する「ISAC」(Integrated Sensing and Communication)も6Gにおける重要テーマです。
中村 スマートフォンや携帯基地局が発する電波を用いることで、位置情報だけでなく、物体の状態や種類まで把握できるようになれば、新たなサービスが生まれ、多くの企業に活用してもらえる可能性があります。
とはいえ、サービス開始当初から高精度なセンシング機能を実現できるかは未知数です。無線技術やAIを駆使して精度を高めていくことにはなりますが、他業界が求める精度をどこまで満たせるかという課題もあります。そのため、まずは実現しやすい領域から段階的に取り組んでいくことになるでしょう。
また、通信事業者としては費用対効果も重要です。実際に導入したときに、それが十分な価値を生み出せるのかを見極めながら、どこまで展開するかを判断していく必要があると考えています。
ただ、研究開発は着実に進んでいますし、一般的に波長が短いほどセンシングの精度は高まると言われています。こうした特性から、ミリ波やサブテラヘルツ波を組み合わせたISACにも大きな期待が寄せられています。
——具体的にISACはどのような用途から使われると考えていますか。
中村 1つは侵入検知です。例えば、線路内に野生動物が入り込んだことを検出するといった使い方があります。これまで人が目視や巡回で対応していた現場の状況をISACで把握できるようになれば、大きな効率化につながります。工場においても、人の転倒などの異常を検知し、安全対策のさらなる強化に生かすことができるでしょう。
また、国境紛争や安全保障上の緊張が続く地域では、他国が飛ばしたドローンをいち早く検知したいというニーズが高まっていると聞いていますので、ISACはこうした課題の解決策にもなり得ると考えています。













