2025年6月25日~26日に幕張メッセで開催の「AWS Summit Japan 2025」では、通信事業者のビジネスをAWSによって高度化・効率化する取り組みが紹介された。
“デジタルツインで障害原因箇所を15秒で特定” ドコモ鈴木氏
26日のスペシャルセッション「ビルダーのためのAWSテクノロジー:その深化と進化」に登壇した、NTTドコモ ネットワーク本部 サービスマネジメント部 オペレーションシステム部門 担当部長の鈴木啓介氏は、AWSの目的別データベースが安定したネットワーク運用に貢献していることを紹介した。
NTTドコモ ネットワーク本部 サービスマネジメント部 オペレーションシステム部門 担当部長の鈴木啓介氏
ドコモでは、約120万台にのぼるモバイルネットワーク機器からトラフィックデータを収集し、システム状態を常時監視するオブザーバビリティを実現している。曜日や時間帯によって利用状況が大きく変動する通信サービスにおいては、正確な把握のために過去データとの比較が不可欠だ。こうした要件に応えるべく、ドコモは時系列データベース「Amazon Timestream」を採用。収集したデータは「Amazon Managed Grafana」によってリアルタイムにグラフ化・可視化され、サービス提供状況の把握に活用されている。
また、大規模な障害が発生した際には、原因の特定にデジタルツインを用いている。通常、複数の装置から一斉にアラームが発報されるようなケースでは、要因の特定に多くの時間を要する。ドコモでは、商用データを取り込んだデジタルツイン上でアラーム発生状況を再現し、相関分析を行うことで、被疑箇所を迅速に特定可能にしている。あるケースでは、わずか15秒で原因箇所を特定できたといい、「速やかな復旧措置が可能となり、お客様のサービス影響時間を極小化できる」と鈴木氏は述べた。
AWS上に構築されたデジタルツインで障害原因箇所を特定するデモ
このデジタルツイン運用には、AWS上に構築したMVP(Minimum Viable Product)アーキテクチャを活用している。「Amazon S3」と「AWS Glue」でデータを常時自動収集し、「Amazon Neptune」によってグラフ化。これによりネットワーク構成の動的なトポロジーを生成し、障害発生時には自動的に分析処理が起動する。運用担当者はWeb UIで分析結果を確認するだけでよく、対応の効率化が図られている。