エリクソン・ジャパンのブースの目玉といえるのが、VoLTE(IMSをベースとしたLTE上でのVoIPサービス)の実機デモンストレーションだ。現在、LTE端末の音声通信は3G網で行われているが、年内に韓国や米国の一部のキャリアがVoLTE導入、来年以降、日本を含む多くのキャリアへの普及が本格化するものと見られている。
このデモは、ブース裏にLTE基地局/コアネットワーク装置を配置、スウェーデンのIMSをネット経由で利用して実施されているもので、VoLTE対応スマートフォン試作機(クアルコム製)間で実際にその通話品質を確認することができる。
このコーナーではLTEのエリア外ではVoLTEから3Gへハンドオーバーして、通話を継続するSR-VCCと呼ばれる機能の動作デモも行われている。
別のコーナーでは、VoLTEと同じくIMSを活用して通信事業者が高品質のテレビ会議サービスを提供するためのソリューション「Ericsson Visual Communication」も紹介されている。このソリューションではユニファイドコミュニケーションとの連携も意識されている。
VoLTE端末によるSR-VCCの動作デモンストレーション。VoIPから3G回線交換への切り替えが確認できる |
ネットワークインフラ関連では、エリクソンが新しく開発した500Gbpsの処理能力を持つ次世代パケットコアノード「SSR(Smart Services Router)」も目玉といえる。この装置は単にルーターとして利用する場合、16Tbpsもの性能を発揮できるという。
このほか、複雑な構成のネットワークの最適化を容易に実現する「SON Optimization Manager」や、ユーザー体験を可視化することでネットワークのパフォーマンスを容易に把握できるようするMESA(Managed End-user Service Assurance)などOSS/BSS関連のソリューションの展示も目立った。
エリクソンが米国の拠点で開発した500Gbpsの次世代パケットコアノードSSR |
サービス関連では、次世代おサイフケータイ「NFC」のコーナーで、エリクソンがNTTドコモとともに実用化を進めているNFC対応POS端末などのデモを見ることができる。
またITSコーナーでは、GPSを使って車載端末の位置を格子状のエリア単位で把握し、位置に応じた適切な情報の配信を行う「ジオメッセージング」の具体的な活用法が紹介されている。
ブーステーマの「ネットワーク化社会」を冠したコーナーでは、ネットラジオや家電製品などをゲートウェイに接続し、スマートフォンなどで制御できるSWoT(Social Web of Things) のデモが行われている。
エリクソン・ジャパン代表取締役社長 ヤン・シグネル氏 |
ワイヤレスジャパンの初日となる6月30日、エリクソン・ジャパンの代表取締役社長のヤン・シグネル氏は、ブース内で報道関係者のインタビューに応え、「エリクソンにとって日本は米国、中国に次ぐ3番目に大きな、堅調に成長している市場であり、今後、我々の期待を超える成長を見せる可能性がある」と日本市場への強い期待感を示した。
さらに「3~4年後に25倍になると見込まれているデータトラフィックへ対応できるソリューションの提供が最大の課題であり、コンシューマー、スマートフォン、ネットワークの各研究拠点を活用して対応策を準備している」とした。
中国ベンダーの台頭によりモバイルインフラ市場の競争が激化していることについても「劇的に変化する競争環境の中で、エリクソンは市場シェアを着実に伸ばしており、今後も中国や他の国のベンダーとフェアに競争していく」と言及。
そのうえで、エリクソンの強みとして(1)世界180カ国以上の国事業を展開することによる規模のメリット、(2)技術開発で主導的な立場にあり、多くの知的財産を持っていることの2点を挙げ、複雑なネットワークを運用するためのサービスの提供に優れている点が、日本市場でのビジネス展開にも活きてくるという見方を示した。