AI需要の急拡大に伴い、膨大な演算処理を担うデータセンターの整備が世界中で加速している。しかし国内では、東京・千葉や大阪といった大都市圏の土地や電力に限りがあり、キャパシティの限界が見えつつある。こうした背景から、地方分散型のデータセンター構築が注目を集めている。
この分散化を支える上で欠かせないのが、データセンター間相互接続(DCI)の高速・大容量化、そして低遅延化だ。通信速度は400Gがスタンダードとなりつつあり、800G対応製品の開発も進むが、同時に伝送の高速化に伴う消費電力の増大が課題となっている。
この課題解決のカギとして期待されているのが、光電融合技術を活用する光デバイスの一種であるCPO(Co-Packaged Optics)である。
アンリツ サービスインフラストラクチャーソリューション事業部 ソリューションマーケティング部 部長の望月大幹氏は、「ハイパースケーラーもCPOに注目しており、実用化への機運が高まっています」と語る。CPOは、光トランシーバーをスイッチASICと同一パッケージ内に実装し、電気配線の距離を極限まで短縮することで、伝送損失と消費電力を大幅に削減できるアーキテクチャだ。IOWN構想が掲げる「電力を100分の1に低減」という目標にも合致しており、次世代インフラを支える中核技術として注目されている。
一方で、CPOは交換が容易なプラガブル光トランシーバーとは異なり、故障時に装置全体のリプレースが必要となる可能性もある。そのため、開発や製造段階での信頼性確保には、これまで以上に精緻な測定・評価が求められる。
アンリツ 通信計測カンパニー サービスインフラストラクチャーソリューション事業部 ソリューションマーケティング部 部長の望月大幹氏(右)と、課長の薄葉光弘氏
CPOにも対応する測定ソリューション 多様な視点の測定が品質を支える
CPOでは、光素子とASICが極めて近接しており、実装時の性能担保やベンダー間の責任分界点の特定などが非常に難しい。アンリツはこの課題に応える測定ソリューションを展開している。
望月氏がまず紹介するのが、ビットエラーレートテスタ(BERT)「MP1900A」だ。これは、デバイスにテスト信号を通して伝送誤差を可視化し、微細なビット誤りを正確に検出する装置である。
シグナル クオリティ アナライザ-R「MP1900A」
また、「MP2110A」は、高速光信号の波形やジッターを解析する光サンプリングオシロスコープで、QSFP-DDなどのプラガブル光トランシーバーの製造ラインで広く使われている。その高い再現性と測定精度から、CPOのような新しいアーキテクチャでも信号品質評価への応用が進む。これらの装置では、複数の信号波形を重ねて可視化する「アイ・ダイアグラム測定」によって、信号の品質や変調の健全性を定量的に把握できる。
さらに、光デバイスの波長特性を解析し、OSNRやSMSRの測定を行う光スペクトラムアナライザが「MS9740B」だ。望月氏は「多様な視点で測定し、各種光デバイスの品質を確保することが求められています」と語り、これらの機器がNTTの研究開発部門や大手デバイスメーカーで広く活用されていることを明かす。