「我々は、IP電話サービスによる中堅・中小企業の通話料削減の提案を中心にして成長してきたが、現在はもう一歩踏み込んで、通信機器を含めたトータルでの通信コストの削減提案に注力している。キーワードは“Asterisk”だ」――。フュージョン・コミュニケーションズ・取締役執行役員営業部長の井上好永氏はこう語る。
同社は2001年4月に、IP技術を用いて当時としては衝撃的な「全国一律24時間3分21円」という低料金のIP中継電話(市外電話)サービスを開始した。その後、03年2月に「全国一律3分8.4円」のIP加入電話サービス「FUSION IP-Phone」を開始。09年4月にはウィルコムと連携し、固定電話並みの低料金を実現した携帯IP電話サービス「楽天モバイル for Business」を投入するなど、「Everything Over IP」のスローガンの下、新サービスや新技術を積極的に導入。販売パートナーと一体となって企業にIP電話を提供してきた。
海外では公的機関も導入するAsterisk
企業ユーザーのコスト削減への要求は尽きることはない。だが、通話料でみた場合、3分8.4円が7.35円になってもユーザーにとってインパクトはないし、通信キャリア側も経営的に苦しくなるだけで、双方にとってメリットは薄い。だが一方で、ユーザー宅内の通信機器の低価格化はさほど進んでいない。
そこで、電話設備を含むトータルでのコスト削減提案が有効と考えた。それを実現するツールとしてフュージョンが注目したのが「Asterisk」だった。
Asteriskは、米Digium社が開発したPBX機能を安価なPCでも実現できるオープンソースのIP-PBXソフトウェアで、2004年9月に正式バージョンが公開された。日本では、通信キャリアが対応しなかったこともあり、ほとんど普及していないが、海外では一般企業だけでなく、フランス郵便公社や米ペンシルべニア大学、米共和党全国委員会など、公的機関を含むあらゆる組織で幅広く利用されている。
同社は2010年4月21日、FUSION IP-PhoneのAsterisk正式対応を発表、「FUSION IP-Phone対応Asterisk修正プログラム」の一般頒布を開始。これにより、AsteriskベースのIP-PBXでもFUSION IP-Phoneが利用できるようになった。
アスタリスク推進室長の鎌田武志氏は、「その2年前から社内を説得していた」と明かす。時間がかかったのは、通信キャリアとしてオープンソースのIP-PBXに対応することの信頼性の面での不安が大きかったからだ。だが、前述のように海外では公的機関でも利用されており、トラブルは起きていない。また、09年11月からAsterisk修正プログラムを限定公開して接続検証を実施し、自社設備への悪影響がないことなどを確認できたため、正式対応に踏み切った。