「LAN配線を最大90%削減」PicoCELAの特許技術「PicoCELA Backhaul Engine(以下PBE)」が実現する新しいネットワークの姿だ(参考記事:30台のマルチホップを安定運用 LANケーブルフリーを実現するメッシュWi-Fi|BUSINESS NETWORK)。
PicoCELA 代表取締役 CEOの古川浩氏によるブース内セミナー
従来のWi-Fi環境構築では、Wi-FiアクセスポイントのバックホールをLANケーブルで接続する必要があり、エリアが広がるほど費用がかさんだ。また、不感地帯や干渉を防ぐには専門エンジニアによるエリア設計を行わねばならず、これも設置コストに跳ね返った。
PicoCELAのソリューションはこうした手間を過去のものにする。PBEは安定したメッシュネットワークを構築する仕組みだ。対応のアクセスポイントを複数台設置し、親機と子機の設定をすれば、自動的に最適な中継経路を構築する。アクセスポイント同士は多段ホップで中継を行うため、見通しがよければLANケーブルは親機に接続した1本のみで済ませることも可能だ。壁を挟んだ別室など無線が到達しない場所では、LANケーブルでバックホールをバイパスできる。
PBEの大きな特徴に動的ツリー制御がある。レイアウト変更やアクセスポイントを追加する場合でも、特段の設定作業を行うことなくダウンタイムゼロでエリア変更・拡張ができる。
「ワイヤレスジャパン×WTP 2023」のPicoCELAブース内ステージでは同社代表取締役CEOの古川浩氏がセミナーを行い、通路にはみ出るほど多くの聴衆が耳を傾けていた。同社ソリューションへの期待の表れだろう。
新製品はバックホール性能2倍
展示の中心はアクセスポイントの新製品「PCWL-0500」(屋内用)と「PCWL-0510」(屋外用)だ。Wi-Fi 6に対応し、従来機種の2倍のバックホール性能を持つこの製品は、各機器をクラウドで管理できる「PicoManager」を標準提供していることも特徴のひとつだ。接続機器の管理やアクセスポイントの死活監視はもちろん、信号監視マップやバックホール監視機能を備え、ネットワークのあらゆる状態をWebブラウザ上で可視化するサービスだ。加えて、接続した機器から取得したデータを活用したエッジソリューションのプラットフォームとしても活用できる。Wi-Fiの可能性を広げ、高付加価値化を実現する。
中央が屋外向けのアクセスポイント「PCWL-0510」。左は同製品用の指向性アンテナ、右は参考出展のPBE組み込みソリューション
衛星通信と連携
また、ブース内では衛星通信アンテナも目立っていた。日本国内でも商用サービスが始まり注目が高まっている衛星通信サービスだが、これとPBEとの連携の検証が進んでいるという。「PBEはLANケーブルをなくそうとしている。衛星通信サービスは光ケーブルが引けない場所での通信が目的であり、親和性を感じている」と説明員。山間部や海などの僻地はもちろん、複雑な工事が不要で簡単に仮設できるというPBEの機動性を生かし、災害時や避難所での実運用に向けた実証実験を行っているとのことだ。
衛星通信サービスと連携し、不感地帯に通信を広げる
ワイヤレスジャパン会期中、古川氏ほかPicoCELA社員によるブース内セミナーが開催され、清水建設、プロロジス、BONXといったユーザー企業も登壇する。さらに、25日には会場内セミナーブースで古川氏によるセミナー「エンタープライズ無線LANメッシュが拓く新しい電波空間の構築とその活用」が開かれる。同社の製品に関心をお持ちなら、合わせての聴講をおすすめしたい。