2022年9月に総務省より公布された「無線設備規則の一部を改正する省令」を受け、Wi-Fiの新たな通信規格「IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow)」の商用化がスタートした。
「Wi-Fi HaLowは、従来のWi-Fiでは実現できない長距離通信に向いており、障害物などへの回り込み性能も高い。さらに省電力性も大きな特徴で、ケースによっては数か月・数年電力が持つ」。
IoTアプリケーション用Wi-Fi HaLow準拠モジュールを開発する豪モースマイクロ社 ワールドワイドセールスおよび事業開発担当シニアバイスプレジデントのフィル・クミン氏は、「ワイヤレスジャパン×WTP 2023」の802.11ah 推進協議会/無線LANビジネス推進連絡会ブースに参加し、Wi-Fi HaLowのメリットについて、こう述べた。
モースマイクロ社 ワールドワイドセールスおよび事業開発担当シニアバイスプレジデントのPhil Kumin氏、同社 フィールドアプリケーションズエンジニア Sheridan Tapsall氏
従来のWi-Fiの通信距離は数十メートルに留まるが、Wi-Fi HaLowは1kmもの通信距離を可能とする。クミン氏によると、農作地の用水路監視や学校・公園の安全安心管理、スマートホームなど様々なユースケースが想定されるという。
高齢者の見守り用途にも
例えば、石川県加賀市では、Wi-Fi HaLowを用いた実証実験が行われている。実験では、梨園の選果場に無線アクセスポイント、圃場にカメラと接続した無線端末を設置。映像やデータをリアルタイムで選果場に送り、梨園に行かなくても生育状況などが把握できたという。
農業以外にも、「Wi-Fi HaLowと加賀市内の高齢者が持つ血圧計を接続し、高齢者の見守り用途として使える。自治体の業務効率化にもつながる」と、同社 カントリーマネージャーの田中健仁氏は語った。
モースマイクロ製のWi-Fi HaLow準拠モジュールは、「競合製品と比べてチップが小さく、さらに省電力性が高い」とクミン氏。
モースマイクロ製Wi-Fi HaLow準拠モジュール
またモースマイクロは、IoTセキュリティカメラの開発にも力を入れる。「カメラに我々のモジュールを組み込めば、カメラを無線で動かせる。LANケーブルなどの配線も不要だ」と田中氏は胸を張った。
今後同社は、AIメーカーなどと連携しながらWi-Fi HaLowの実証実験を進め、日本にも横展開していくとのことだ。