5G/6Gのミリ波活用を加速する「光ファイバ無線」とは

超高速・大容量だけど届きにくい――。5Gで使われる28GHz帯をはじめ、高周波数帯無線の運用は実に厄介だ。使いこなすには多くの基地局を展開する必要があり、当然コストは高くなる。この課題を解決する新技術を開発中なのが、NTTアクセス研。カギとなる技術が、無線信号を光ファイバで送る「光ファイバ無線」だ。

世界中で5Gエリアが拡大しているが、比較的低い周波数帯のSub6帯(6GHz以下)に比べて大幅に展開が遅れているのがミリ波帯(28GHz帯)だ。

高周波数帯は広い帯域幅を使って超高速・大容量通信が可能な反面、電波の直進性が強いため端末まで届きにくい。電波の死角・不感知エリアをなくすには、従来よりも多くの基地局を使った「高密度展開」が必要だ。この扱いにくさが、ミリ波活用が進まない最大の理由である。

ただし、この問題を放っておくわけにはいかない。

5Gでは今後、28GHz帯以外にも複数の高周波数帯の利用が想定されている。さらに次世代の6Gでは、より高い周波数帯である「テラヘルツ波」(100GHz以上)の活用も検討されている。「高周波数帯をいかに効率的に活用するか」は、通信業界にとって大きな課題だ。

5G基地局から“光ファイバ”を伸ばす
この高密度展開を可能にするソリューションが、「分散型アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)」である。基地局の機能を、電波の送受信のみを行う「張出局」と、それらの制御等を行う「集約局」に分離。小型・軽量で扱いやすく、低コストな張出局を多数使って不感知エリアの解消に役立てる。

張出局と集約局の間は光ファイバで接続する。無線信号の波形情報を光ファイバ伝送する「アナログRoF(Radio-over-Fiber)」と呼ぶ技術を用いる。つまりは「光ファイバ無線」だ。伝送するのは光信号だが、受け取った側で元の無線信号を取り出すことができる。

張出局は無線の送受信のみを行い、デジタル信号への変換や、無線送受信の制御等はすべて集約局側で行う。5G基地局の現在の構成に当てはめると、Radio Unit(RU)の機能のうち無線送受信のみを取り出して張出局とし、残りの制御機能はすべて、DU/CU(Distributed Unit/Central Unit)とともに集約局に納めるかたちになる。

これにより、張出局を小型化、低消費電力化、そして簡素化することで低コスト化し、かつ設置工事やメンテナンスを容易にすることがDASの目的だ。

NTTアクセスサービスシステム研究所が実施したA-RoFを活用した伝送実験
NTTアクセスサービスシステム研究所が実施したA-RoFを活用した伝送実験

DASそのものは、ミリ波に比べて低い周波数帯を用いるWi-FiやLTEでも使われてきているが、より精緻な無線制御が必要な高周波数帯に対応するのは難易度が高い。これに挑戦しているのが、NTTアクセスサービスシステム研究所(以下、NTT-AS研)。「A-RoFを活用した高周波数帯無線エリア構築技術」の研究を進めている。

 

 

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