農業から防災・福祉分野へ活用範囲を拡大 山梨市長が語る「自営LPWA網で作るスマートシティ」

NTT東日本ら4者による官民連携事業として自営LPWAネットワークによる農業のスマート化を進めてきた山梨市。高木市長は「スマート農業を起点に、他の分野でもLPWAを活用していく」と話す。2021年1月18日から開催中の「NTT東日本 Solution Forum 2021 ONLINE」での講演から、山梨市のスマートシティ化の取り組みを紹介する。

山梨市は2017年に官民連携プロジェクトとして「アグリイノベーションLab」を発足させ、IoTを活用して農業従事者の作業負担を軽減する取り組みを進めてきた。JAフルーツ山梨、ベンチャー企業のシナプテック、NTT東日本と市が参画し、圃場内の環境データを可視化したり、そのデータを営農指導に役立てる仕組みなどを構築。農家の見回り稼働の省力化や、アラートによる損害回避などで効果を挙げてきている。


NTT東日本 Solution Forum 2021 ONLINEで講演した山梨市長の高木晴雄氏

環境センサーからのデータ収集には、Wi-FiおよびLPWAを活用している。山梨市は中山間地域が市域の80%以上を占めており、電源の確保が難しい露地や山間の圃場で農業のスマート化を進めるには「LPWAは不可欠」と高木晴雄市長は話す。「免許が不要で、ソーラー電源でセンサーを稼働できるのでどこにでも設置できる」利点を活かすべく、LPWA基地局を市内5カ所に設置して市街地および圃場を広くカバーしているという。

農家のIoT機器導入を後押しするため、2018年9月には購入費の補助制度も創設。30万円を上限に初期購入費の2分の1を補助している。

これまで約3年にわたり農作業の省力化を目的に進めてきたこの取り組みを発展させ、現在は他の分野にも活用範囲を広げている。

その1つが、2020年12月から開始した福祉分野での活用だ。一人暮らしの高齢者の見守り、災害時の安否確認に用いるのが目的だ。靴に内蔵するセンサー、温湿度やドアの開閉を検知するマルチセンサー、キーホルダー型センサーを駆使して、在宅時から外出時まで高齢者の状況を見える化。離れて暮らす家族は、専用サイトでドア反応や在室状況などを確認できるほか、温湿度が予め設定したしきい値を超えた場合にメール通知を受け取ることもできる。


福祉分野での活用イメージ

さらに、災害発生時には避難所への避難状況を家族や市職員へ通知することも可能だ。センサーはニフコ製で、充電が不要なエネルギーハーベスティング無線通信技術のEnOceanを使用している。EnOceanの通信をLPWAに変換して長距離通信する送信機兼ブリッジデバイスを高齢者の自宅や公民館等に設置することで、高齢者自身は充電の手間なく見守りが可能だ。

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