ICT×未来

<特集>海のIoT

「水中光Wi-Fi」で高速通信――青色LEDが切り拓く海中マーケット

文◎坪田弘樹(本誌) 2018.10.10

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

水中における無線通信速度を“キロ”から“メガ”へと一気に飛躍させる新技術の開発が進んでいる。日本のお家芸とも言える青色LEDを使った可視光通信によって、海中マーケットを開拓しようとする取り組みだ。

 
海中探査等を行う潜水艇や水中ドローンが互いに、あるいは船上や陸上と通信を行う場合、その方法は2つに限られる。電波が通らない水中では、ケーブルをつなぐ“紐付き”か、音波を使う音響通信の二択というのが現状だ。

紐付きなら映像伝送のような高速通信が可能だが、運用上の制約が多い。活動範囲が限定されるうえ、ケーブルが絡むのを避けるため単独運用が基本となる。

一方、水中音響通信は遠くまで届く反面、通信速度に課題がある。一般的に使われている音響通信装置の性能は数十kbps。動画はもとより、静止画の伝送すらスムーズに行えない。

そのため現状では、無線通信は潜水艇等の位置情報や速度等の状態情報のやり取りに用いられている。水中ドローンにソナー(音響探査装置)とカメラを搭載した場合も、そのデータはドローンが戻ってきた後に取り出すのが常だ。国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海洋工学センターで海洋戦略技術研究開発部 海洋観測技術研究開発グループ 主任技術研究員を務める澤隆雄氏は次のように話す。

「水中ドローンの小型化が進んだことで、漁船やボートで持っていくだけで手軽に探査ができるようになった。だが、戻ってくるまでデータが回収できず、“取っているはずだけど、よくわからない”状況が半日から1日続く。これをなんとかしたいというのが、新たな水中無線通信技術を開発するモチベーションになっている」

国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海洋工学センター 海洋戦略技術研究開発部 海洋観測技術研究開発グループ 主任技術研究員 博士(工学) 澤隆雄氏
国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海洋工学センター
海洋戦略技術研究開発部 海洋観測技術研究開発グループ
主任技術研究員 博士(工学) 澤隆雄氏


青色LEDがもたらす革命その新技術が、可視光を使った水中無線通信である。

可視光通信とは、人間の目には判別できないほど高速に光を明滅させることで信号を伝達する技術だ。陸上でも実用化が進んでおり、音波と同様に水中で減衰しにくい光の特性を活かして、数十Mbps程度の高速通信を実現する「水中光Wi-Fi」(JAMSTECによる呼称)の開発が進められている。

我々が日常的に使っている電波は水中を通らない。例えば、Wi-Fiの伝達距離はせいぜい1cm程度だ。

対して、水中で目を開ければ周りが見えることからも分かるように、光は、特に青色光は水を通りやすい。そのため、実は昔から可視光を使った水中無線通信の研究は続けられていた。しかし、実用に耐え得る通信装置の開発には至らなかった。高出力で青色光を発し、かつ高速に明滅させられる応答性の高い光デバイスを低コストに作る術がなかったからだ。

その状況を大きく変えたのが、2014年に日本人3名がノーベル物理学賞を受賞したことで話題になった「青色LED」である。白色光を放つLED電球の普及をもたらしたあの技術が今、水中でも革命を起こそうとしているのだ。「小型で高出力かつ応答性が高い、通信用の光源として適切なデバイスが安く手に入るようになった。それで今、陸上でも水中でも可視光通信の取り組みが活発化してきている」(澤氏)

青色通信光を使った水槽内実験の様子(左)。右は、海中での実験に使われた水中光無線通信装置(提供:JAMSTEC)
青色通信光を使った水槽内実験の様子(左)。
右は、海中での実験に使われた水中光無線通信装置(提供:JAMSTEC)

スペシャルトピックスPR

netscout1908
synology1907
cloudian1907

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】5G時代のエッジ革命
 <Part1> 楽天の5G×MEC革命  <Part2> スマートシティとエッジコンピューティング <Part3> エッジコンピューティングでクルマはどう進化する? <Part4> ローカル5Gと相乗効果も  製造業で進むエッジ活用 <Part5> 五感をエッジデータ化  ヒト視点のエッジコンピューティング <Part6> エッジ運用の課題と対策  <コラム> 5GでエッジAIはさらに進化する

●[インタビュー] サイバーディフェンス研究所 名和利男氏「5Gへの攻撃で国家に大打撃  DX時代は通信がアキレス腱」 ●Wi-Fi 6の使い道を徹底解説 ●セキュリティ人材不足はシェアして解消 ●ビル制御システムはNWで守る ●見えてきた“90GHz帯”5Gの可能性 ほか

>>詳しい目次を見る

ホワイトペーパー

スペシャルトピックス

モバイルテクノミリ波の設計・製造を強力支援
5G時代の多様なニーズに応える!

モバイルテクノがミリ波モジュール設計開発サービスを拡充した。

エクストリーム ネットワークス5万人利用のNWをわずか2名で運用
IT管理者に嬉しいWi-Fi 6対応AP

エクストリームのWi-Fi 6対応APならAI自動RF管理など機能が満載だ。

ネットスカウトシステムズNWを隅々まで可視化してDDoS対策
ボリューム型もL7攻撃も防ぎ切る!

世界最大級の監視システムATLASで全世界のDDoS攻撃を防ぎ続ける!

Synology話題の「メッシュWi-Fi」を選ぶならSynology

ハード性能に加えてソフト機能も充実! ビジネスにも活用できる。

Cloudian HyperStore企業のGDPR遵守を強力サポート!
EB級ストレージを安価に自社構築

Amazon S3と同等のオブジェクトストレージを自社で構築・運用できる

NEC UNIVERGE SVシリーズクラウドとの連携を容易に実現!
新NEC UNIVERGE SVシリーズ

新端末を組み合わせることで、通話にとどまらない充実した機能

アクセスランキング

tc1904
20191017

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2018 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます