2019年末に解禁されて以降、多くの企業が取り組んでいるローカル5G。制度解禁当初は最低でも数千万円と言われていた導入費用の低価格化が進み、今では数百万円台のスターターキットが出始めるなどハードルが下がっている。
今後はさらに多くの企業にとって、プライベートネットワーク構築の有力な選択肢の1つになっていくと期待されるが、使いこなすにはローカル5Gで扱う電波の性質を理解する必要がある。
ローカル5Gで使える電波は大きく2種類ある。1つは4.6~4.9GHz帯のSub6(サブ6)と呼ばれる周波数帯、もう1つは28GHz帯のミリ波だ。
ミリ波とは?電波が1秒間に振動する回数はヘルツ(周波数)と表すが、3THz(テラヘルツ)以下の電磁波が電波と定義されている。
ミリ波は30G~300GHzの周波数の電磁波を正確には指すが、モバイルネットワークの世界では26~29GHz帯もミリ波と呼ばれている。また、100GHz(0.1THz)を超えるとサブテラヘルツ帯、あるいはテラヘルツ帯というケースもある。
周波数が違うと、電波の伝わり方が変わってくる。高い周波数であればあるほど、電波の直進性は高くなる。反対に低い周波数ほど電波は回り込み障害物を避けやすい。その一方、波長の短い高い周波数ほど、伝送できる情報量は大きくなる。このように周波数によって電波の性質は変わってくることから、周波数帯ごとに多様な用途の無線システムが使い分けられている(図表1)。
図表1 周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴
こうした電波の性質に加えて、「利用できる帯域幅も重要だ」とエアースパン・ジャパン 代表取締役のスティーブン・シップリー氏は説明する。帯域幅とは、その通信や放送に使える周波数の範囲であり、最高周波数と最低周波数の差となる。基本的に帯域幅が広ければ広いほど、通信速度が速くなるが、ミリ波のような高い周波数ほど広い帯域幅を確保しやすい。
ローカル5Gでは合計1.2GHzの帯域幅が利用可能で、その内訳はサブ6で300MHz幅、28GHz帯で900MHz幅となっている。そのうち、サブ6では1つのチャネルで利用できる周波数帯は100MHzが上限となっている。対してミリ波は「最大400MHzの帯域幅を2つ使える。そのため、アップリンクの通信についても高いスループットが出せる」とシップリー氏は解説する。
ミリ波は今まで、その直進性の高さによる扱いにくさなどから、移動体通信には不向きと考えられていた。そのため、かつては軍事用レーダーや衛星通信などの用途に限られており、利用できる帯域幅が多く残っている。
これらをまとめるとローカル5Gにおけるサブ6とミリ波の特性は図表2のようになる。
図表2 サブ6とミリ波の比較