2021年12月初旬、3GPPが開催したオンライン会議においてRelease 18(Rel-18)の標準化作業項目が承認された。Rel-18は、2020年代後半に実用化される「5G-Advanced」の初版となるもので、2022年第2四半期に標準化作業を開始する予定だ。
この“5Gの第2フェーズ”について、いち早く方向性を示したのがファーウェイだ。2020年末に「5.5G」の名称で同社が提示したビジョンは、2021年6月から始まったRel-18 Workshopの議論にも影響を与えた。標準化作業に携わるファーウェイ・ジャパン 標準化・事業推進部 事業戦略・レギュレーション ディレクターの朱厚道氏は、「Rel-18の標準化トピックと当社のビジョンには非常に高い整合性がある」と話す。
ファーウェイ・ジャパン 標準化・事業推進部 事業戦略・レギュレーション ディレクター 朱厚道氏
最初の焦点は上り大容量化Rel-18で検討される項目数は、無線アクセスネットワーク関連だけで28に及ぶ。コアネットワーク側でも28項目が予定されており、全体的な進化の方向性が読み解きにくい。
そこで、ファーウェイの5G-AdvancedビジョンにRel-18の検討項目を当てはめたのが上の図表だ。超高速・大容量(eMBB)、超低遅延・高信頼(URLLC)、多数同時接続(mMTC)の3つの特性に、赤字で示した5つの新しい軸が加わる。
5G-Advancedの大テーマは、産業界での5G活用を加速することとなるが、その観点でキーになるのが「アップリンクの大容量化(UCBC)」だ。中国をはじめ5G活用が進んでいる国では、このニーズが高まっているという。「例えば鉱山等で人や機材の状況を見える化したい場合に、センサーデータや映像を集めるために大容量のアップリンクが必要になる。他にもテレビ中継や港湾設備の自動操業、遠隔操縦など、上り通信の大容量化を期待する声は多い」
このUCBCの注目点が、Duplexevolutionだ。TDDにフルデュプレクス(全二重通信)を導入する。
TDDは通常、1つの周波数を一定時間ごとに送信用と受信用に分けて擬似的に全二重通信を行っているが、「1つのバンドを分離して上りと下りで別々に使う方式を初めて入れる」ことで、アップリンクの大容量化を容易にする。FDDの場合は必ず上り・下りの周波数帯がペアで存在するが、その制約をなくすことで上下の比率を変えやすくするのだという。また同時に、送信の待ち時間がなくなるため低遅延化にもつながる。