――1月1日付でNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)とNTTコムウェアが子会社化され、新ドコモグループが誕生しました。7月には、大規模な組織再編も控えています。R&D部門を率いる立場から、新ドコモグループに対する意気込みをお聞かせください。
谷 2021年10月に新ドコモグループの事業戦略が発表され、今後の重点領域や事業の進め方等が明確になりました。将来の事業運営に向けて、今まで以上にR&Dの役割が重要になってくることから、以前にも増して迅速にイノベーションを創出していかなければならないと身を引き締めています。
――3社の機能統合によるシナジーの1つに、ドコモの移動回線とNTTComの固定回線の融合によるネットワークの競争力強化があります。進捗状況はどうなっていますか。
谷 ネットワーク統合には、短期と中長期の2つの時間軸があります。まず短期的な取り組みとして、電力設備や伝送網などインフラ設備の統合から始めています。一方、中長期的には6G/IOWNを見据え、次世代ネットワークアーキテクチャへの移行に向けた検討を進めています。
――3GPPでは、モバイルアクセスと固定アクセスを5Gコア(5G C)に収容することで移動・固定融合を実現する「5G Wireless and Wireline Convergence(5WWC)」の議論が進んでいます。5WWCのような新たな移動・固定融合を、世界に先駆けて目指しているのでしょうか。
谷 そうですね。ただ、実態としては世界に追い付いていないところもまだまだあります。それらをしっかりリカバリしながら、我々は「One Step Ahead」と言っていますが、さらにその先を行く、新たな次世代ネットワークアーキテクチャに進化させていこうとしています。
――移動・固定融合により高品質で経済的なネットワークを実現するとのことですが、具体的に何が可能になるのですか。
谷 移動・固定融合はすでに一部で実現しています。例えば、クラウドサービスやデータセンターとお客様の拠点を閉域でセキュアに接続するNTT ComのFIC(Flexible Inter Connect)は、2021年4月よりドコモの移動回線にも対応しており、モバイルネットワークからクラウドサービスに接続できるようになっています。
直近では、ドコモのFMCサービス「オフィスリンク」とNTT Comの「Arcstar UCaaS」やNTTコムウェアの「SmartCloud® Phone」といったクラウドPBXが連携しました。
重要なのは、お客様から見たときに移動と固定の世界がシームレスになることです。それが、高品質で経済的なネットワークの実現につながると考えています。
5G SAのユースケース開拓――ネットワークに関する新たな取り組みとして、この12月に5G Cと5G基地局を組み合わせた5G SAサービスを法人向けに提供開始しました。
谷 5Gもいよいよ次のステップに進むことになり、大きな期待を抱いています。
5G SAは、NSAと比べて、高速大容量・低遅延といった5Gならではの特徴をより効果的に発揮できるほか、将来的にはネットワークスライシングが可能になります。具体的にどのようなユースケースがあるのか、まずはリーディングパートナーとなる41の企業・自治体とともに5G SAの環境下で検証を進めていきます。
2022年夏には、一般のお客さま向けにも5G SAサービスの提供開始を目指していますが、スマートフォンへの対応も含め、5Gの能力をより活かせるユースケースを開拓していきたいと考えています。