ALANコンソーシアムは3月22日、活動状況や実証実験の成果について記者説明会を開催した。
ALANコンソーシアムは、海中をはじめとする水中環境を、1つのLocal Area Network(LAN)と位置づけ、水中で利用できる光無線技術の研究開発を進める団体だ。民需に特化したデバイスやシステム、ネットワーク開発も推進している。2018年にトリマティスが代表となって設立され、現在では3研究所、11大学/高校、12企業の合計26団体が参画する。
今、活動しているのは水中光無線通信、水中LiDAR、水中光無線給電の3つのワーキンググループ。今回はそのうち水中光無線通信、水中LiDARについての成果が発表された。
ALANコンソーシアムの目指す姿
水中光無線通信、LiDARの成果
水中光無線通信ワーキンググループでは、伝送速度1Gbps、伝送距離1~100mの実現を目標に研究開発を進めてきた。そして2021年11月、トリマティスとJAMSTECが共同で水中通信実験を実施し、速度1Gpbs超、伝送距離100mの目標を達成した。
実験の概要
送信機は高出力のドライバーと4つのレーザーダイオード(LD)によって高出力・マルチビーム化し、受信機には高感度のPhotomultiplier Tube(PMT)をアレイ配置することで、受光効率の向上と通信品質の劣化抑制を可能にしたという。
水中光無線通信装置
水中LiDARワーキンググループが目指すのは、距離レンジ 1~50m 、分解能 <1cmの水中LiDARの実現だ。 このLiDARは、TOF(Time of Flight)と呼ばれる、送った光と戻ってくる光の時間差で距離を計算する方式を採用。これを多点に打つことで、水中にある対象物の3D情報を得られる。実験を開始した2019年の初期モデルはスキャン時間も長く、サイズも大きかったが、2022年に開発したLiDARはスキャンスピード4倍、距離分解能5mmと高速・高精細化が進んでいるという。
水中TOF LiDARの概要
水中LiDARの成果
なお、水中無線給電ワーキンググループは伝送距離1~10m、伝送電力10W以上の水中光給電の実現を目指している。「まだ目標には達していないが、東工大・千葉工大で基礎実験を実施した。来年度のデモ実施を目指し、アプリケーションを仮定した水中光無線給電システムを検討している」とALANコンソーシアム 幹事 兼 産業技術総合研究所の森雅彦氏は説明した。
ALANコンソーシアム 幹事 兼 産業技術総合研究所 森雅彦氏