イチからわかるネットワーク時刻同期

5Gの普及等を背景に、通信ネットワークにおける時刻同期の必要性が高まっている。リアルタイムアプリの安定運用に不可欠なこの時刻同期は、どのような仕組みで実現されるのか。その基本から解説する。

時刻同期の市場展望「「スマート〇〇」を下支え 電力・製造業もPTPへ」リアルタイム性を重視するアプリケーションの広がりによって、高精度な時刻同期を必要とする領域は今後ますます広がっていく。5G網や放送業界のほかにも、鉄道等の公共交通、医療、計測、エネルギーなど、従来NTPを活用していた幅広い産業で、PTPへの移行が進んでいる。

背景にあるのは、IoTの導入とスマート化だ。丸文の作間氏が例に挙げるのがスマートグリッドである。「これまでも発電設備の制御に用いるデータ管理等でNTPが使われていたが、今後は複数の発電・変電所をつないだ、より高精度な時刻同期の需要が見込まれる」

同社 測位タイミング課の堀田将太氏によれば、「実際にPTPの採用が進んでいる。送電網を保護するため、障害が発生した設備をグリッドから切り離すのが目的で、電流の出入りを正確に測定するのにPTPの精度が必要だ」。

TSN、自動運転車も新市場に

スマートファクトリーの要求精度も高い。イーサネットの拡張規格で、工作機械・産業ロボットの制御に用いられる「TSN(Time Sensitive Networking)は、時刻同期や優先制御機能等を加えることでリアルタイム性を高めているが、ここでもPTPを使っている」と原田産業 AIFチーム セールスマネージャーの乾充一氏は話す。

産業用イーサネットで使われるTSN規格「IEEE 802.1AS」では、同期クロックを提供するプロトコルとして、PTPをベースとする「gPTP(generalized PTP)」を定義している。TSNはこのほか、IP映像伝送や無線式列車制御システム(CBTC)、前述のスマートグリッド等にも適用範囲が拡大しており、今後あらゆる産業界でPTP技術が不可欠になっていきそうだ。

将来的には自動運転車のように、無線通信で高精度に同期制御を行うデバイスが社会の隅々に浸透する世界が訪れる。また、物理空間とサイバー空間を密連携するサイバーフィジカルシステム(CPS)においても、実社会とIT/ネットワークシステムの時刻合わせは必須の要素だ。

5G/6G時代のビジネスに乗り遅れないためにも、今から時刻同期関連の技術とノウハウを積み重ねておきたいところだ。

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月刊テレコミュニケーション2021年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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