2km伝送向けに生まれた廉価版現在は光トランシーバーのコストを下げるために、数多くの光伝送規格でFECが採用されています。FECとはForward Error Correctionの略で、前方誤り訂正と呼びます。送信側でエラーを検出・訂正するための冗長ビットを付加して、受信側でエラー訂正を行います。この技術を使用すると、光部品のコストを低減できるメリットがあります。
LR4ではなぜか、FECを使うように定めていません。FECを使用しないで伝送距離を10kmに伸ばすために高性能なレーザーと受光器を使用しています。
SR4の伝送距離100mでは足らず、でもLR4の10kmも必要ない、かつ廉価な100G光トランシーバーを求めるHyper Scale Data Centerのために「CWDM4」が提唱されました(図表5)。
図表5 LR4からCWDM4、そしてCWDM4-OCP
LR4ではレーザーの波長間隔が800GHz(約4nm)であったのに対して、CWDM4では波長間隔を20nmと広くしたため(図表6)、複雑な波長制御機構が不要となりました。
図表6 100G LR4とCWDM4の波長間隔
また、伝送距離も10kmから2kmに制限することで、高価なレーザーでなく廉価なレーザーを使えるようになりました。さらに、Facebook社の呼びかけで、伝送距離を500mに制限してさらなる低コスト化を追求した「100G CWDM4-OCP」という規格が生まれました。
40km伝送の低コスト化長距離拡張版であるER4も、FECを使うように定めていません。さらに、ER4はFECを使用しないで伝送距離を40kmに拡張するために、非常に高性能なレーザーと受光器を使用しています。
「QSFP28 100G ER4」として販売されている光トランシーバーをWeb上で見かけますが、そのほとんどはFECなしでは40km伝送できず、25km~30kmが限界です。つまり、ER4と言いながら実態は「ER4f」であるので注意が必要です。ER4にFECを適用して小型化・低コスト化を実現したのがER4f(または4WDM-40)というMSA規格です(図表7)。
図表7 ER4からER4f(4WDM-40)
100mで2芯のMMFを使用したい100mの伝送距離を2芯のマルチモードファイバー(MMF)で実現するために「SWDM4」という規格が提唱されました。これまで長波長帯の技術だったWDMを短波長帯に適用したのが「100G SWDM4」です(図表8)。100G-SR4と比べて、使用するファイバー本数を8本から2本に削減することが可能です。
図表8 全体コストの低減化、多芯ファイバーから2芯へ
また、100G SWDM4は10G-SRと同じLCコネクタで、かつMMFが使用されるため、データセンター内のファイバーを張り替えることなく10Gから100Gにアップグレードすることができます。
さらなる長距離伝送要求に対して、80km、120km伝送規格も登場しています。80kmについてはメーカー各社が「QSFP28 100G ZR4」や「COLORZ」などを独自に製品化しており、120kmについても「QSFP28 100G DCO」の製品化が期待されています。
また、QSFP28よりもさらなる小型化が実現できるSFP-DD 100G SR2(100m)/DR(500m)/FR(2km)/LR(10km)が議論されています。
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第2回は光トランシーバーの100GbE光伝送規格に焦点をあてて説明しました。同じ速度の光伝送規格でも絶えず小型化、低コスト化のニーズに応えて光伝送規格が策定されていることがお判りいただけましたでしょうか。
本連載の後半(第3回、4回)では、より実践的な内容として、光トランシーバーにまつわるトラブル事例とその解決方法について説明します。