講 師 上智大学 |
小川将克(おがわ・まさかつ)教授 |
2003年、上智大学大学院 理工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。2004年、日本電信電話株式会社入社。NTTアクセスサービスシステム研究所にて、無線LANの標準化、研究開発に従事。現在、上智大学 理工学部情報理工学科教授。無線通信システム、ワイヤレスセンシング、スマートIoTシステムに関する研究開発に従事 |
Q IEEE 802.11bfとは、どのような規格ですか。
小川 無線LANの電波を使ってセンシングをするための規格です。送信アンテナと受信アンテナの間で、例えば人が動くとその空間が変化します。これを電波の伝わり方によって計測し、「部屋に人がいる/いない」「ここを人が通った」といったことが検知できるようになります。
Q 通信のための規格ではないのですね。
小川 無線LANの歴史は高速化の歴史と言えますが、それとは別に今、計測用途の標準規格が作られています。
IEEE 802.11mcでは、測距機能のFTM(Fine Timing Measurement)が導入されました※1。アクセスポイントからスマートフォンに信号を送り、戻ってくるまでの時間を基に距離を測ります。その後、IEEE 802.11azで測位機能の標準化も行われています。
ただし、FTMも11azも、対象となる人がスマホ等のWi-Fiデバイスを持っていないと計測できません。11bfでは、これが“デバイスレス”になります。
何も持っていなくてもセンシングできたほうがいいですよね。11bfでは、送信機と受信機がある空間内なら、Wi-Fiデバイスを持っていなくても電波の変化によって「いる/いない」「歩いた」「転んだ」といったことがわかるようになります。
※1 IEEE 802.11mcの測距
機能信号を送ってから戻ってくるまでの応答時間(ラウンドトリップタイム:RTT)に基づく測距機能「FTM」が導入された。これに基づき、WiFi Allianceが2017年に「Wi-Fi CERTIFIED Location」認証プログラムを発表。身近な例では、Google Wifiに採用されている