<特集>宇宙通信で変わる未来衛星通信はこれからどうなる SpaceX独走、中国も加速、日本企業は?

低軌道衛星コンステレーションによる通信事業が過熱している。イーロン・マスクのSpaceXやジェフ・ベゾスが進めるKuiperの躍進、中国も「国家的課題」に設定した。日本は衛星通信とどう関わればいいのか。

イーロン・マスクのSpaceX、ジェフ・ベゾスが進めるAmazonのProject Kuiper─―。宇宙産業への注目がさらに高まるなか、通信分野で“激戦区”となっているのが、両社が取り組む低軌道衛星(LEO)コンステレーションだ。

低軌道に打ち上げた多数の衛星を相互にネットワーク化して運用する低軌道衛星コンステレーションは、従来の静止衛星通信では満たせなかったニーズに応える。

1つは遅延の問題だ。静止衛星(GEO)は地上約3万6000kmにあるため、データの送受信に時間がかかる。一方、低軌道衛星は地上1000km程度と、静止衛星よりはるかに地上に近いため遅延が大幅に短縮される。

また、低軌道衛星は地上局までの距離が短く、電波の出力が小さくて済むため小型化が可能だ。これにより、打ち上げコストも大幅に削減できる。さらに、衛星を多数打ち上げることでスポットではなく、地球全域に通信サービスを提供することが可能になる。

世界では未だに通信環境が整っていない場所が多く、インターネットに日常的に接続できていない人は約35億人いると言われている。海や空の上でも、陸上と同レベルのブロードバンド通信は利用できない。低軌道衛星コンステレーションは、こうした空白地帯を埋める手段として期待が高まっている。

SPACETIDE 代表理事 兼 CEO/A.T.カーニー ディレクターの石田真康氏が説明する。「通信は非常に大きなマーケットになる可能性がある。これまで宇宙では放送関連のサービスがメインだったが、これ以上は伸びない。観測分野は成長しているが、あまり市場が大きくない。通信が大幅に伸びるかどうかは宇宙産業にとって非常に重要なテーマの1つだ」。

SPACETIDE 代表理事 兼CEO/A.T.カーニー ディレクター 石田真康氏
SPACETIDE 代表理事 兼CEO/A.T.カーニー ディレクター 石田真康氏

よりインパクトが大きいのは、宇宙通信サービスの拡大に伴う、インターネット市場のさらなる成長だ。35 億人が新たにインターネットに繋がるようになるということは、検索エンジンやアプリケーション、ネットショッピングのユーザーがそれだけ増えることを意味する。「GAFAはそもそも通信事業者ではないから、ビジネスモデルが柔軟に考えうる。例えばAmazonなら、AmazonのEコマースやAWSのクラウドサービスを組み合わせることもありえる。そのあたりは純粋な通信事業者と全く違う。メガコンステレーションは、4桁億円以上の投資ができる人たちが戦えるマーケットだと考えている」(石田氏)

サテライト・インダストリー・アソシエーションによれば、2020年の宇宙産業の市場規模はグローバルで3710億ドル(約41兆円)。そのうち衛星通信関連サービスを見ると、ブロードバンドが28億ドル、固定衛星通信が157億ドル、移動衛星通信が20億ドルとなっている。モルガン・スタンレーは、宇宙産業は2040年までに1兆ドル以上に急増し、約4割をインターネットサービスが占めると予測している。

図表1 2020年のグローバル衛星産業調査

図表1 2020年のグローバル衛星産業調査

月刊テレコミュニケーション2021年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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