静止画IoTの可能性広げるLiLz IoTカメラ×AIが目視点検をラクにする

目視点検業務を、独自のIoTカメラとAIでリモート化する「LiLz Gauge」が好評だ。カメラというと動画をイメージしがちだが、LiLz Gaugeは静止画。これにより、低消費電力かつ電源不要で利用できる。

公共インフラや工場・プラントなど、全国の様々な施設で日常点検業務の効率化が求められている。なかでもニーズが高いのが、日常点検項目の約9割を占めるといわれる目視点検のリモート化だ。担当者が遠隔地や危険な高所・暗所に行き、計器を目視して数値に異常がないことを確認し、また帰る。たった1つの計器を見に行くこともあれば、100以上の計器がある大規模施設もある。人材不足が進む今、日々の目視点検業務の効率化は、喫緊の課題となっているからだ。

そうしたなか、沖縄のスタートアップ企業LiLzが開発した「LiLz Gauge」に注目が集まっている。IoT/AIを活用し、目視点検業務のリモート化を実現するソリューションだ。

IoTカメラが定期的に計器を自動撮影し、LTE経由でクラウドにアップロード、AIによる画像解析で数値を自動で読み取る。撮影した写真や読み取った数値は、PCやタブレットから確認できる。

LiLz Gaugeの導入手順はこうだ。まず現地にIoTカメラを設置し、その場でiOSアプリから撮影テストを行い、カメラ位置の調整や解像度、フラッシュのオン・オフなどを設定する。次にPCやタブレットなどからクラウド上のダッシュボードにアクセスし、計器や形の種類の選択など、画像解析のための初期設定をする。以上で、後は撮影された画像とAIが読み取った計器の値が、ダッシュボードからいつでもどこでも確認可能になる。もし、AIが読み取った値に誤りがあれば、手動で正しい値に訂正する。この修正作業を繰り返すことで、読み取り精度はどんどん向上していく。

カメラのバッテリーは3年持続LiLz Gaugeで用いるIoTカメラ「LiLz Cam」は、福岡のIoTデバイスメーカー、Braveridgeと共同開発したものだ。超低消費電力で、電源不要で使えることが特徴だ。前述の通り、計器が設置されている場所は、遠隔地や高所・暗所も多く、近くに電源がないことが少なくない。カメラの電池交換のため、現地に赴く必要が頻繁に発生するようでは、リモート化の意味がなくなってしまう。LiLz Camは、1日3回の定期撮影で約3年間のバッテリー持続を実現している。

「今でこそ賛成されているが、当時はメンバーに『そもそもそんなカメラ、絶対世の中にある』と開発を反対された。しかし無かったので、こっそり作った」とLiLz 代表取締役社長の大西敬吾氏は振り返る。

LiLz 代表取締役社長 大西敬吾氏
LiLz 代表取締役社長 大西敬吾氏

LiLz Camには、LTE Cat.1とBluetooth 5 Long Rangeに対応するLTE版と、Bluetooth 5 Long Rangeのみに対応するBLE版の2種類があり、電源の有無や設置台数などによって使い分けられるようにしている。

例えば近くに全く電源がない場所で遠隔点検したい場合は、LTE版を設置する。特定の期間だけ撮影頻度を上げたい場合はプランと設定を変更するだけでいい。LTE版は消費電力を抑えるため、LTE Cat.1での下り通信機能は持っていない。そのため、クラウドから指示して任意のタイミングで撮影したり、撮影頻度の変更をなどを行いたい場合には、オプションのLTE/BLE対応ゲートウェイ「BLE-LTE Router」(電源が必要)を設置する。

BLE版は、これだけではクラウドにアップロードできないため、BLE LTE Routerの設置が必須だ。そのため電源がある屋内で複数の計器を点検したいケースに適している。LTE回線を一本化できるので、LTE版を複数設置するよりも通信コストが抑えられる。

図表1 LiLz Cam-LTEとBLE-LTE Routerを組み合わせた場合のシステム概要

図表1 LiLz Cam-LTEとBLE-LTE Routerを組み合わせた場合のシステム概要

いずれも閉域網で通信するため、安全性も担保されている。また、REST API経由でユーザー側のシステムとの連携も可能だ。

価格はLiLz Cam本体がオープン価格で数万円。LiLz Gaugeでは通信プランもセットで提供する。毎月の利用料はデータ通信量によって異なるが、例えば標準画質なら1日3回撮影できるプランであれば、LTE版は20MB/月の通信料込みで1台あたり月額1600円。BLE版は1台あたり月額800円で、BLE-LTE Routerの通信料金が100MB/月までで1台あたり月額1200円かかる。

月刊テレコミュニケーション2021年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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