「5Gが始まったばかりだが、次の6Gにもすでに本気で取り組んでいる」。韓国の6G戦略について、マルチメディア振興センター(FMMC) ICTリサーチ&コンサルティング部 シニア・リサーチディレクターの三澤かおり氏はこのように説明する。
5Gでは“世界初”のスマホでの商用サービスにこだわるなど、ICTにおける先進性のアピールに力を入れてきた韓国。5Gを基盤に各産業のDXを促進して新サービスなどを育成する「5G+戦略」を掲げるなど、文在寅政権において通信技術は重要な役割を担っており、2020年8月には「6G R&D戦略」を、通信分野を所掌する科学技術情報通信部が発表している。
マルチメディア振興センター(FMMC) ICTリサーチ&コンサルティング部
シニア・リサーチディレクター 三澤かおり氏
ファーウェイのいない隙に6G R&D戦略では、5G同様に世界初の商用サービス提供に加えて、3つの目標が設定されている。「6Gの中核標準特許で世界一」「スマホ市場シェア世界一」「機器世界市場二位」という非常に意欲的な目標だ。
「6Gで世界をリードしていくためには、まずは中核技術の特許が必要となるため、これらを取ろうという考えだ。スマホ市場については、最近LG電子がスマホ事業からの撤退を決定したため、実質サムスン製スマホのシェアを世界一にしようという目標になっている。さらに端末だけではなく基地局設備においても、ファーウェイが締め出されているうちに高いシェアを狙おうとしている」と三澤氏は解説する。
この3つの目標達成に向けて、5年間で約2000億ウォン(約200億円)の予算を投じることが決定し、8つのプロジェクトを立ち上げている。なお、6G関連予算はこれに留まるものではなく、6Gを活用したスマートシティなどのプロジェクトが別途動いている。
中核標準特許で世界一という目標に対しては、科学技術情報通信部が特許庁と協力して、特許確保の可能性が高い技術を「標準特許戦略マップ」として整理。「これに沿ってプロジェクトを構築し、民間の研究開発を資金面でも支援するという流れになっている」という。
自国の技術をITUや3GPPの標準仕様にできるだけ盛り込むため、研究段階を2つに分けているのも韓国の6G R&D戦略の特徴といえる。
ITU-Rなどで6Gへの要求事項が検討される2023年までの第1段階では、要素技術の先行研究などを集中的に行う。そして次の2025年までの第2段階は、第1段階の成果やITU-Rなどの動向を踏まえながら、標準候補特許の発掘と標準候補技術の性能検証を柔軟に行う(ローリングプラン)というスケジュールだ(図表1)。
図表1 韓国の6G R&D戦略のスケジュール