マイクロソフトと長崎大学らが連携協定、MR・AI活用したオンライン遠隔医療の開発へ

日本マイクロソフトは2021年3月3日、次世代オンライン遠隔医療システムの開発・提供において、国立大学法人 長崎大学、長崎県五島中央病院、長崎県、五島市と連携協定を締結した。

最初のプロジェクトとして、関節リウマチ患者を対象とした遠隔医療の実用化に向けて、Mixed Reality(複合現実)を活用した国内初の次世代型オンライン遠隔医療システムとして、長崎大学関節リウマチ遠隔医療システム「NURAS」(ニューラス、Nagasaki University Rheumatoid Arthritis remote medical System)を開発。同日より、長崎大学病院(長崎市)と五島中央病院(福江島)において実証実験を開始した。


NURASの運用イメージ

NURASは、専門医過疎地域である離島・へき地など遠隔地にいる患者が、Mixed Realityなどの活用により、リウマチ専門医による遠隔医療を、これまでよりも高い精度で受けることが可能となるシステムだ。

従来のテレビ電話やWeb会議では、関節を中心とした病変部位を平面映像(2D)だけで観察および類推することしかできず、関節リウマチ診療に不可欠である正確な関節評価を行うことは困難という。本システムでは、マイクロソフトの「Azure Kinect DK」を深度センサーとして患者の前に置き、専門医が、Mixed Realityを実現するデバイス「Microsoft HoloLens 2」を装着し、コラボレーションツールの「Microsoft Teams」を使ってビデオ会議を行うことで、平面映像だけでは評価が困難な病変部位を立体的(3D)かつリアルタイムに観察・評価できるようにした。


五島中央病院において、患者の患部をAzure Kinect DKでスキャンして診察を受ける様子

Azure Kinect DKは被写体の立体的な動画を撮影できるカメラで、これを用いることで、医師が装着したHoloLens 2に投影される3Dホログラムを、高精度かつリアルタイムに生成できるほか、Azure Kinect DKに内蔵された7つのマイクロフォンアレイで、音源の方向を含めたクリアな音声を録音できるという。撮影された患部の映像やおよび録音された患者と医師の会話などのデータは、Microsoft Azureでセキュアに処理される。

これにより、離島・へき地といった専門医過疎地域においても高水準で均てん化されたリウマチ専門遠隔医療が可能になるとしている。


長崎大学病院において、HoloLens 2を装着した専門医の目の前に投影される
患者の病変部位の3Dホログラムのイメージ

また、本システムは関節リウマチ患者のみならず、その他の神経疾患や運動器疾患など、患者と対話を行いながら病変部位の観察や運動評価が必要な分野にも応用できるという。

ネットワーク接続が可能なあらゆる地域と専門医を結ぶことができることから、国内外において、新型コロナウイルス感染症流行下における遠方通院時の感染リスクや通院に伴う人の移動の削減、さらに医療従事者の働き方改革にも貢献できるとし、将来的には5Gによる高速通信技術との連携や、現在はコロナ禍で難航している学生の実習を中心とした教育や研究を含む他分野への発展も予定している。

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