コロナ危機が続く中、多くの企業がテレワークを導入している。少なからぬ人にとって、オフィスはもはや毎日通う場所ではなくなった。しかし「完全にテレワークに移行することが正しいとは限りません」とジュニパーネットワークスの林宏修氏は語る。「むしろテレワークの普及に伴い、リアルな場の役割は高まっています。イノベーションを生み出すにはリアルな場での協力が欠かせないためです」
とはいえ、コロナ禍が収束する気配はまだない。また、移動時間から解放されたことで生産性が高まった従業員も多いだろう。これらを踏まえて、林氏は今後の働き方を次のように予測する。「2021年以降は、テレワークとオフィスワークでのハイブリッドなワークスタイルが定着していくのではないでしょうか」
ネットワークをユーザー視点で MistのAIが自動運用ハイブリッドワークを実現するためには様々な施策が必要になるだろうが、それらすべての前提となり、欠かせないのがネットワークだ。「今までのネットワークは、ルーターやスイッチなどが故障していなければ、正常という考え方でした。しかし、ハイブリッドワークの時代、ネットワークを使うユーザーの目線がより大事になります」
例えば、ネットワークに繋がりにくい、繋がっているけど遅い、繋がった後もよく切れる、といった経験は誰しもあるのではないだろうか。これらの問題はルーターやスイッチなどが故障していなくても発生するものであり、「ネットワークを単なるインフラとして捉えると、こういった問題を検知することも困難です。ミスト(2019年にジュニパーが買収)では創業当初から、どのようなデータを可視化し、スコアリングすればUX(ユーザー体感)を最適化できるか徹底的に研究しています」と林氏は胸を張る。
UXを最大化するという視点から、ジュニパーが展開しているのが、「AIドリブンエンタープライズ」である(図表1)。
図表1 AIドリブンエンタープライズ(Mist)製品ラインナップ
同社の無線LAN AP(アクセスポイント)はUXに影響を与える150もの指標を2秒ごとに測定、数kbpsのメタデータにしてクラウドで解析。150もの項目を人手で確認するのは困難であるため、「接続までの時間」「ローミング精度」など7項目のSLE(Service Level Expectations:サービスレベル期待値)に集約してダッシュボードに可視化してくれる。ユーザーはこれらのSLEに期待値を設定すれば、あとはAIが自動的にSLEを満たすようにネットワークを分析し、修正する。
また、同社のユーザーはAIエンジンの仮想アシスタント「Marvis」を利用できる。自然言語処理が可能なAIで、人間のエンジニアと対話しているかのようにチャットを介して様々なオペレーションをこなすことが可能だ。「例えば、あるユーザー企業でネットワークの疎通ができなかった際にMarvisに原因を問いかけたところ、エンドツーエンドでLANを分析して『認証用のRadiusサーバーとの連携設定に不備がある』という問題を言い当て、無事修復することができました」