O-RANの“本命”RICとは何か オープン化だけじゃないもう1つの挑戦

無線アクセス網(RAN)のオープン化を推進するO-RAN Allianceにはもう1つ、インテリジェント化という目的がある。“賢いRAN”を作るコアコンポーネント「RIC」とはどのようなものなのか。

オープンなRAN(Radio Access Network)を意味する「オープンRAN」は、NTTドコモが今年、オープンRANの推進団体であるO-RAN Allianceの仕様に準拠した基地局を商用導入したことで注目を集めた。O-RAN Allianceには世界各国のキャリアを含め約200社が参加。ドコモ以外のキャリアも導入を予定するなど、大きな流れを作り出している。

O-RANが追い求めるのは、RANのマルチベンダー化だ。基地局設備はこれまで単一ベンダーの製品で構成されるのが常だったが、異ベンダーの組み合わせが可能になれば、機器調達・構成の自由度が向上し、柔軟な機能選択・追加ができるようになる。

5G RANは集約基地局(CU)や分散局(DU)、無線送受信部(RU)等の複数装置とコントローラー等から成り、O-RANはそれらの仕様および装置間のオープンインターフェースを規定する。ベンダーロックインがなくなれば、複数ベンダー製品の長所を組み合わせた“いいとこ取り”のRANが作れるわけだ。また、新興ベンダーの参入により競争が生まれ、機能進化、価格低廉化も期待できる。

O-RANの2本目の柱ただ、この「オープン化」は、O-RANの目的の1つに過ぎず、もう1つの柱が存在する。「インテリジェント化」だ。基地局設備を制御するRAN Intelligent Controller(RIC)が、そのコアコンポーネントになる。

簡単に言えば、RANを“賢く制御する”ためのコントローラーの仕様を決め、それとCU/DU/RUとの間のインターフェースもオープンにするのが、O-RANが目指す到達点だ。現時点では、DUとRU間のオープンインターフェース仕様である「O-RANフロントホール」に準拠した基地局をドコモが商用運用しているが、それはO-RANのほんの一部に過ぎない。

2本目の柱が立つことで、キャリアは様々な恩恵を受ける。KDDIでO-RANの標準化に関わる渡辺伸吾氏は「基地局を制御するブレインも特定のベンダーに縛られずに使えるようになる。複数ベンダーの基地局を使う場合でも、統一した制御ができる」と話す。また、通信性能や品質を把握し、最適化することも容易になる。「ブラックボックスだった部分がオープンになれば、オペレーター側でチューニングしやすくなり、パラメーターを最適化してパフォーマンスを高めることもできる。サードパーティ製のアルゴリズムを持ってきて品質を高めるといったこともやりやすくなる」。

もちろん、基地局設備を提供するベンダーも独自にRANの高度化を続けてきているが、キャリアはこれまで、ベンダーの機能開発・実装を待つほかなかった。それを自ら主導できるようにするのがO-RANの狙いだ。KDDI モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 課長補佐の北藪透氏は、「イノベーションが起こしやすくなる。我々自身で改良してもいいし、もっと良いアプリケーションを持ってきて使ってもいい」と期待する。

KDDI 技術企画本部 技術戦略部 標準開発グループリーダーの渡辺伸吾氏(左)と、モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 課長補佐の北藪透氏

KDDI 技術企画本部 技術戦略部 標準開発グループリーダーの渡辺伸吾氏(左)と、
モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 課長補佐の北藪透氏


月刊テレコミュニケーション2020年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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