NECは2020年12月10日、宇宙空間での大容量データ伝送を可能にする衛星用光通信装置を開発したと発表した。JAXAの光衛星間通信システム「LUCAS」向けで、静止衛星用と地球観測衛星用の2種類を開発した。
静止衛星と地球観測衛星の間の距離は4万kmにも及ぶが、レーザー光を用いることで伝送速度は1.8Gbpsと従来比7倍以上に高速化した。海底ケーブルやLANなどで広く利用されている低出力の半導体レーザー光を、真空環境のもとで高出力に安定的に増幅する技術などを開発することにより実現したという。
従来の電波を用いるデータ中継では、直径数メートルのアンテナを衛星に搭載しても伝送速度は240Mbpsにとどまっていた。この新しい装置は、従来比約1/30の14cmのアンテナ径で、衛星間の伝送速度1.8Gbpsを実現する。
今回開発した静止衛星用の光通信装置は、11月29日に種子島宇宙センターから打ち上げられたJAXAの光データ中継衛星に搭載されている。また、地球観測衛星用の光通信装置は、今後打ち上げ予定のJAXAの地球観測衛星「だいち3号(ALOS-3)」と「だいち4号(ALOS-4)」に搭載され、光データ中継衛星との間で光通信の実証や実利用が行われる計画だ。
静止衛星用の光通信装置(画像提供:JAXA)