「VMNO(Virtual Mobile NetworkOperator)」という言葉が国内で披露されたのは2019年9月、総務省「モバイル市場の競争環境に関する研究会」におけるテレコムサービス協会の提案が最初だ。以来、同協会は5G時代におけるMVNOのあるべき姿として「VMNO構想」を提唱。上記研究会の最終報告書(今年2月)にも盛り込まれ、実現に向けた議論が今後進められていくことになる。
VMNOとはいったい何か。
もちろん、単に「MVNO(仮想移動体通信事業者)」の文字の並びを変えただけではない。どころか、MVNOのビジネスモデルを根本的に変える可能性を秘めている。MVNOビジネスの自由度を飛躍的に高め、ひいては、5Gのユースケース開拓を加速させることがこの構想の最大の狙いだ。
欧州生まれの新コンセプトIIJ MVNO事業部 ビジネス開発部 兼 事業統括部 担当部長(戦略・渉外担当)の佐々木太志氏によれば、VMNOというコンセプトはもともと欧州からの“輸入品”だという。
欧州の政策シンクタンクCERREが欧州委員会向けに作成した報告書で提案された概念であり、その核は、仮想通信事業者側から5Gコアネットワークを柔軟に制御できるようにしようという点にある。移動体通信事業者(MNO)のSIMカードをそのまま扱うだけだった従来のMVNOとは、発想が根本的に異なるものだ(図表1)。
図表1 既存のMVNOとVMNOの違い
なお、同報告書は、欧州内における5G展開の政策オプションを提言したもので、4Gまでの政策を継続しつつ進化させる“エボリューションシナリオ”と、5G展開を機に政策を大きく転換する“レボリューションシナリオ”の2つを提示している。VMNOは、後者で登場する概念だ。
このVMNOは、5G時代にコアネットワークが仮想化/クラウド化することを前提としている。佐々木氏は、「4Gまでと違って、5Gでは仮想化によってコアネットワークを柔軟に変更できるようになる。MNOはAPIベースでネットワークスライスを制御することになるが、このAPIが外部に公開され、我々のような事業者が使えるようになればバーチャルなMNOができる」と説明する。実現すれば、「VMNOもMNOも基本的に、やれることはまったく同じになる」という。
IIJは、このようにAPIを介してネットワークスライスを制御する形態を「ライトVMNO」と定義している。図表2は、4G時代のMVNOと比較したライトVMNOのイメージを示したものだ。
図表2 「ライトVMNO」のイメージ