<特集>オフィスのNew Normalポストコロナ時代のオフィスのあるべき姿とは?

感染症対策と経済活動を両立させるポストコロナ時代のオフィスはどうあるべきなのか。働き方/オフィス変革を推進する内田洋行とイトーキの実例から探っていこう。

新型コロナウイルス感染拡大後の約半年間、政府・自治体が打ち出す対策に合わせて、企業の働き方も次々と変化を強いられた。人の移動が極端に制限された緊急事態宣言下、オフィスに人が戻り始めた宣言解除後、そしてコロナと“うまく付き合う”働き方を模索する現在では、働き方もオフィスの役割も異なる。

第二波・第三波の襲来が懸念される今後も、我々はこの変化に対応していかねばならない。

従来の自然災害やパンデミックとは規模・質ともに異なる事態を経験したことで改めて明らかになったのは、働き方とオフィスに「可変性」と「可視性」が不可欠ということだ。

これまでも働き方の柔軟性を高める取り組みが多くの企業で進められてきたが、今後はそこに、従業員の安心安全を確保するという新たな要素が加わる。感染拡大の状況に応じてオフィスで働く人数や社員間の距離をコントロールしながら、同時に生産性や従業員満足度を維持・向上させなければならない。

それには、社員の働き方やオフィスの使用状況をモニタリング・分析し、オフィス環境を最適化し続ける新たなオフィス戦略が欠かせない。

出社率をコントロールする感染拡大対策の例として、内田洋行における出社率コントロールの例を見てみよう。図表1は同社のオフィスの状況を示したものだ。

図表1 内田洋行 新川第2オフィス7階の変化

図表1 内田洋行 新川第2オフィス7階の変化

もともと同社では、社員の在席比率を8割程度に設定していた。従業員は業務に合わせてオフィス内の複数のスペースを使い分ける。オフィスは選択肢の1つに過ぎず、自宅が適している作業は上長の了解のもと当然、自宅で行う。

コミュニケーション基盤を2010年よりクラウド化していたため、緊急事態宣言の発令後は最大出社率を25%に設定。社員1人のスペースを直径2mとし、2.5mの間隔を確保するために席数を制限した。4~5月は、オフィス構築を主力事業とする同社にとって“かきいれ時”。緊急事態下でも生産性を大きく損なわず、出社率を12%に抑えられたという。

密を避けるため、単純に出社人数を減らすことはどんな企業でもできようが、働き方を考慮しない付け焼き刃の施策であれば、生産性や従業員満足度は大きく下がる。日常的に柔軟な働き方を実践していたことが、今回のような異常事態においても効果を発揮したと言えるだろう。

内田洋行 知的生産性研究所 部長の矢野直哉氏は「コロナ問題がある今は社員の『安心・安全の確保』が最上位にくるが、働き方変革の基本的な考え方は変わらない。人の行動変革が根幹であり、オフィス環境もマネジメント・人事制度も、それに基づいて整備することが重要だ」と話す。

内田洋行 知的生産性研究所 部長 矢野直哉氏
内田洋行 知的生産性研究所 部長 矢野直哉氏



緊急事態宣言の終了後は、社員間の間隔を2mに短縮。距離を確保できない場所は図表1右のようにアクリル板等を利用して、最大出社可能率を42%まで高めている

月刊テレコミュニケーション2020年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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