IDC Japanは2020年8月20日、国内の企業向けモバイルセキュリティ市場と、クラウドセキュリティ市場の2020~2024年までの予測を発表した。
同社では、企業向け国内モバイルセキュリティソフトウェア製品市場を、「国内モバイエンタープライズセキュリティ市場」として、またSaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)のパブリッククラウド環境に対するセキュリティソフトウェア製品市場を「クラウドセキュリティ市場」と定義し、市場規模算出/市場予測を行っている。
モバイルセキュリティはIAM、脆弱性管理なども需要増
これによると、国内モバイルエンタープライズセキュリティ市場の2019~2024年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は8.4%。売上額ベースの市場規模は2019年の92億円から、20204年には138億円に拡大すると予測している。
働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展、新型コロナによるリモートワークの普及によって、企業でのモバイルデバイスの利用が拡大することで、モバイルデバイスを標的とするマルウェア対策はもちろん、モバイルアプリケーションへのアクセス管理や多要素認証などの、モバイルアイデンティティ/アクセス管理、モバイルアプリケーションへの脆弱性管理への需要が拡大するとIDCは見ている。
クラウドセキュリティ、2024年には2倍以上に
一方、国内クラウドセキュリティ市場の2019~2024年のCAGRは14.6%で、市場規模(売上額ベース)は2019年の137億円から、2024年には272億円に拡大すると予測している。
昨今、会社全体でリモートワークを実施する機会が増加したことで、VPN経由での社内ネットワークの負荷が高まり、業務効率が低下する問題が顕在化している。また、社外から直接インターネットにアクセスする「ローカルブレイクアウト」によるパブリッククラウドの利用が加速すると見られており、パブリッククラウドへのアクセスコントロールであるクラウドシングルサインオンやクラウドセキュリティゲートウェイソリューションによるセキュリティ対策が拡大するとIDCは考えている。
さらに、クラウド環境の利用が加速することで、柔軟な分散アプリケーション環境を実現するため、コンテナ化されたクラウドネイティブアプリケーションの開発/展開/運用が拡大するとみており、コンテナ環境上で動作するアプリケーション監視やアクセス制御、コンテナ管理へのアクセス管理といったコンテナ環境へのセキュリティ対策も、クラウドセキュリティの重要な要素になるという。
国内モバイル/クラウドセキュリティ市場
製品セグメント別 売上額予測(2017年~2024年)
前述のとおり、新型コロナの影響による全社的なリモートワークによって、モバイルデバイスからVPNを経由して社内ネットワークにアクセスする際のパフォーマンス劣化が顕在化し、インターネットブレイクアウトするケースが増加している。特に文書ファイルやプレゼンテーションファイルなどを共有するコラボレーティブワークスペースでは、クラウドシフトが加速し、モバイルデバイスからの利用が広がっているという。
そこで企業や組織には、個人情報や機密情報などが含まれるコンテンツなどのデータを安心安全に活用できるワークスペースの構築が求められる。そのためモバイル環境とクラウド環境の両面において、外部脅威対策だけでなく、脆弱性管理やセキュリティポリシーの一元管理、アクセス管理など総合的なセキュリティ対策が必要となる。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャー 登坂恒夫氏は、「ソリューションサプライヤーは、総合的なセキュリティソリューションの機能を集約し一元的に管理、運用できる集約型のセキュリティリューションを提供すべきである。これによって、企業はモバイルデバイスからインターネット回線経由で直接パブリッククラウドサービスを利用した場合においてもセキュリティが強化され、業務効率と運用効率の向上を図れる」と述べている。