「もくもく会」をご存じだろうか。有志で集まって、それぞれ勉強や作業をするだけの会のことで、各人が「黙々と」取り組むことから付いた名前だ。今、このもくもく会に参加するエンジニアが増えている。
エンジニアに限らないが、社会人がより良いキャリアを形成していくうえで、勉強は欠かすことができない。多くの人が忙しい業務の合間を縫って、あるいは休日を返上して勉強している。しかし、1人ではやる気を持続できないタイプの人も少なくないはずだ。
また、集中して短時間で作業を片付けたくても、業務中はいつ誰に作業を中断させられてしまうか分からない。作業中断後、再び集中状態に入るまでには平均23分かかるとも言われている。
もくもく会ではみんなで集まりつつも、互いに邪魔しない空間を形成することで、こうした課題を解決できる。「いわば『自習室』を提供するようなものだ」とレッドハットでマーケティング本部 プログラムマーケティングマネージャーを務める中村誠氏は解説する。
中村氏はオープンソースの自動化プラットフォームである「Ansible」をテーマとしたもくもく会を定期的に主催している。本稿では中村氏への取材をもとにもくもく会の詳細を解説する。なお、実際には会によってルールや仕組みが異なるため、事前に確認してほしい。
レッドハット マーケティング本部 プログラムマーケティングマネージャー 中村誠氏
ビールを飲みながら参加?多くのもくもく会では、AnsibleやWebデザイン、技術書を読む、といったように大まかなテーマが設定されている。「ある程度、興味や関心を絞って共感を得ないと、なかなか継続して集まらない」と中村氏は説明する。そのため、自分が取り組みたいテーマの会を探すことがまずは1歩目となる。探し方については、「connpass」(https://connpass.com/)というWebサイトがおすすめとのこと。IT勉強会支援プラットフォームで、もくもく会の登録も多い。また、「もくもく会の感想や様子はTwitterなどでも結構流れている。SNSで調べるのも手だ」という。
当日のオーソドックスな流れだが、まずは自己紹介も兼ね、これから取り組む内容を周囲に宣言する。目標を宣言することにより、適度なプレッシャーが加わり集中力の向上が期待できる。大人数での開催の場合、周囲の人とだけ共有したり、各人の自由に任せるケースもある。
宣言後は適宜休憩を取りながら、決められた時間内で作業に取り組む。「ビールを飲みながら作業する人もいるほどだ(笑)」と中村氏は言うが、多くの会では緩やかな雰囲気で行われているようだ。参加者同士で教えあうことを許可するもくもく会もある。
松江で開かれたもくもく会の様子(左)とレッドハットの恵比寿オフィスで開かれたもくもく会の様子(右)。2時間程度で休憩をはさみながら、それぞれが作業に打ち込む
レッドハットの場合、同社のエンジニアやベテラン参加者などがメンター役を務め、質問などに答えている。「オンラインのメモ帳のような場所に質問を書き込んでもらい、メンターが回答している」と中村氏は説明する。最後に各々の進捗や成果を発表して解散となる。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまで、リアルの場に大勢の人が集まるのは難しいが、もくもく会はバーチャルでも開催できる。レッドハットも2月以降はフルリモートでもくもく会を開催している。「リモートで参加すると業務上の連絡や呼び出しで中断してしまうケースもあるが、基本的にはポジティブな感想をもらえている」と中村氏は語る。