――海外ではプライベートLTEが広く使われており、ドイツの製造業ではローカル5Gの導入も始まっています。
ルイズ 5Gはあらゆる産業で使えます。早期に導入する産業は公共安全や製造、エネルギー等ですが、鉄道等の広域なケースにも広がる可能性があります。
どの産業においても最初に検討すべき選択肢は、公衆網が使えるかどうかです。そこに追加的に無線基地局を増やしたり、特別にQoSを足すことで産業・企業ごとの要求に対応できます。
しかし、それでも十分でないケースがあります。例えば、ある自動車メーカーからは「外にデータを出したくない」と要求されました。さらに製造業では高い可用性や信頼性、低遅延が求められます。そうした要件を満たすには、工場内にオンプレミス型で5Gの設備を置く必要があります。
Ericsson Head of Mission Critical and Private Networks Business Area Network
マヌエル・ルイズ(Manuel Ruiz)氏
――オンプレミスでコアからアクセスまですべての設備を置くのですか。
ルイズ 当初はそのかたちでしたが、課題が見えてきました。すべてオンプレミスで設置すると、お客様が運用するには複雑になり過ぎます。
エリクソンでは、導入形態の柔軟性が不可欠だと考えています。つまり、モバイルキャリア(以下、MNO)が運用する設備と、オンプレミス型の設備を組み合わせるハイブリッド型です。
8割がハイブリッド/共用型に――構成例を教えてください。
ルイズ 実際の例を紹介しましょう。
あるお客様の要求は、データを工場の外に出したくない、遅延を抑えたい、スループットも出したい、そして、ネットワークは常に使えなければならないというものでした。もちろん、複雑な運用管理もしたくありません。
この場合は、アクセス設備とEPCノードだけをローカルに置き、ネットワーク管理等の他の機能はMNOがクラウドから提供するものを使います。複雑な管理はすべてMNOが行います。障害等によって、もしMNOとの通信が切れてもローカルの通信は維持されます。
他に、音声通話を使いたいというケースもありました。プッシュトゥトークの機能をローカルに置くことで、キャリアとの間が遮断されてもローカルの通話が継続して使えます。
――すべてオンプレミス型のケースは。
ルイズ 非常に要件が厳しい場合があります。例えば、原子力関連の施設ですね。極端な想定ですが、天災等で周辺が壊滅的な被害を受けたとしても、施設内のネットワークは運用し続けないといけません。運用コストがかかっても、すべての装置をオンプレミスに置くことでそれが可能になります。
私の考えでは、ローカル5Gの8割がハイブリッド型/共用型になるでしょう。ユーザーにとって邪魔な“複雑性”は、MNOのクラウドに置いておいて、ローカルには必要なものだけを置くのです。完全なオンプレミス型は、非常に要求条件が高いか、機能を絞ったシンプルなプライベートネットワークの場合に限られると考えます。
これは、MNOにとっても非常に大きなビジネスチャンスとなります。