<連載>地政学リスク時代の通信戦略海底ケーブルを守れ 官民連携でレジリエンス強化を

国際通信の大半を支えているのが海底ケーブルだ。なかでも日本は、その99%以上を海底ケーブルに依存している。“命綱”のレジリエンスをいかに高めていくべきか。

国際海底ケーブルの重要性が、あらためて注目されている。

総務省は2025年12月、有識者による「国際海底ケーブルの防護等に関する検討会」を立ち上げた。海底ケーブルの防護体制の強化および、国際海底ケーブルの自立性の確保に向けた方策を検討することが目的だ。自民党と日本維新の会が同年10月に交わした連立政権合意書でも、経済安保対策の一環として「南西諸島における海底ケーブルの強靱性強化策の推進」が明記されている。

こうした国政レベルでの動きの背景には、通信インフラが国家機能や経済活動、安全保障を支える基盤となり、その途絶が社会に与える影響が決定的に大きくなったことがある。日本では国際通信のトラフィックの99%以上を海底ケーブルが担っており、その切断や障害は単なる通信トラブルにとどまらない。

同検討会の構成員を務める慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授の土屋大洋氏は、「この10年で海底ケーブルへの意識が大きく高まった」と話す。土屋氏によれば、2006年の台湾近海地震では周辺海域の海底ケーブルが多数切断され、「世界のインターネットが東西に分断された」。さらに2011年の東日本大震災における切断事例を経て、2013~15年ごろから、人為的行為に起因する脆弱性が強く意識されるようになったという。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 土屋大洋氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 土屋大洋氏

三菱総合研究所 モビリティ・通信政策本部 主任研究員の牧山宅矢氏は、「通信インフラを握る国が国際的に大きな力を持つ時代になっている」と語る。「あらゆるインフラや政府機能が通信依存になる一方で、国際通信は自給自足できない」。特に島国である日本にとって、海底ケーブルはインフラ上のボトルネックとして分かりやすく、常に狙われるリスクを抱えている。

三菱総合研究所 モビリティ・通信政策本部 デジタルコンテンツ・データ戦略グループ 主任研究員 牧山宅矢氏

三菱総合研究所 モビリティ・通信政策本部 デジタルコンテンツ・データ戦略グループ 主任研究員 牧山宅矢氏

加えて、海底ケーブルを巡る構造そのものも変化している。同じく検討会の構成員である東京海上ディーアール 主席研究員の川口貴久氏は、近年、海底ケーブルのオーナー構造が変わりつつあると指摘する。従来は大手通信事業者が国際的なコンソーシアムを組成し、共同で所有する形態が一般的だった。しかし2010年代後半以降、メタやグーグルといったハイパースケーラーが自ら海底ケーブルを所有する例が増えている(図表1)。国際トラフィックを生み出してきたプラットフォーム事業者が、物理インフラにも踏み込んでいることは、通信依存の深化を象徴する動きだ。

図表1 海底ケーブル業界の主要企業

図表1 海底ケーブル業界の主要企業

東京海上ディーアール ビジネスリスク本部 マネージャー 主席研究員 川口貴久氏

東京海上ディーアール ビジネスリスク本部 マネージャー 主席研究員 川口貴久氏

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