プロトタイピングとは、実働するプロトタイプを製作し、早期からユーザーのフィードバックを受けながら改良するサイクルを高速に回す開発手法。コーディング不要のノンプログラミングツールを活用したプロトタイピングは、「スゴいIoTを短期間で」開発するための強力なメソッドとなる。
プロトタイピングは初期にまず紹介したいのは、スウェーデンのデザインファームであるTOPPが開発したプロトタイピング向けノンプログラミングツール「Noodl」だ。開発画面上で「ノード」と呼ばれるコンポーネントのステータスやデザインを設定し、繋いでいくだけで、単に処理やデータの流れだけでなく、UIの設計や高度なインタラクションも作ることができる(図表1)。
図表1 Noodlの開発環境の画面
センサーとの接続やAPIを介したリアルデータとの連携もできるため、実際のデータがUXに及ぼす影響が分かる点も特徴だ。ストックホルムの鉄道会社やナイキのアプリ開発、サムスン電子のスマートウォッチ開発に利用されるなど、海外では豊富な実績がある。
TOPPのマティアス・ルイン氏は次のように語る。「我々は“プロトタイピングができなければ良い結果を残せない”という信念を持っている。デザインの難しさや要素数が増すにつれ、プロトタイピングの必要性は増していく。初期の段階で実働プロトタイプを作成することによって、例えばその時点での開発の難易度や必要な通信頻度などが分かるようになる」。
プロトタイピングを行うことで、完成間際になって大幅な手戻り・修正が発生するといった事態も防げ、結果的に開発期間も短縮できるというのだ。
Noodlを日本展開するtensorXの私市瑞希氏は、「NoodlというツールやTOPPの掲げる『Think&Do』という考え方を日本に持ってくることで、日本のモノづくりのプロセスを変革できるのではないかと考えた」と話す。
(右から)tensorX UXデザイナー/Noodlエバンジェリスト 私市瑞希氏、TOPP デザインテクノロジスト マティアス・ルイン氏、tensorX クロスカルチュラルインテグレーター 千和栄氏 |
日本企業がIoTに取り組む際の課題として、プロジェクトの規模が大きくなるにつれ、どうしてもドキュメントベースのウォーターフォール型になってしまうという点がある。このプロセスの中で、企画の意図を正しく理解していない他者からのフィードバックを受けるうちに、ユーザーのニーズから離れたプロダクトができてしまうこともあるという。しかし、「Noodlでプロトタイピングを行えば、企画意図や完成品のイメージを掴めていない人にも『これを作ります』と明示できる」と私市氏は言う。